演技を終えた安藤は、視線を氷に投げかけ首をかしげていた。内容を問われると開口一番、「最悪ですね」と苦笑い。序盤の3回転フリップで転倒し、スピン、ステップの得点も伸びずじまい。自身に合格点などつけられなかった。 「気持ちが入らなかった」という。冒頭の3−2回転ジャンプを連続3回転にしたかった。モロゾフ・コーチと話し合っての結論でも、練習で何度も決めた高難度技に“色気”があった。納得して舞えず、情熱と集中力を欠いた結果だった。 不安定な気持ちを表すように、スピンとステップのレベルは最低の1から最高の4までに分散していた。「自分でも何を表現したかったのかわからなかった」。2位の得点には「この内容で点が出過ぎ」。自分へのいらだちを隠さなかった。 最悪の演技で気づいたのは「ジャンプで失敗したら点が出ない」こと。表現力を磨いてきた五輪シーズン途中に、表現と技術がそろって高得点が生まれる現実を胸に刻んだ