2016年7月26日未明、神奈川県相模原市の障害者施設で起きた凶行から一年。この事件に私たちはどう向き合うべきか。障害者運動や障害者文化論などを研究してきた二松學舎大学専任講師の荒井裕樹氏は、「障害者の生命と尊厳が傷つけられたこと」に対し、社会的な「怒り」が足りていないのではないか、と疑問を投げかける。 「相模原事件」にどう向き合うか あの凄惨な事件から一年が経つ。まずは、生命を奪われた方のご冥福を祈り、いまなお癒えない傷を抱えた方の心の内を推し量りたい。 一方で、この事件を追う人たち(報道関係者や障害者団体関係者)からは、早くも事件の風化を懸念する声が漏れている。この原稿を書いている7月現在、まだ殺人罪などで起訴された植松聖(さとし)被告の公判もはじまっておらず、現場となった建物の再建問題も確たる結論が出ていないというのに。 私は「相模原事件」にどう向き合うかが、この社会の未来を決めると