中央アジア・タジキスタンにあるムルガーブは、 寒村という言葉がぴたりと当てはまるとても小さなところでした。 パミール高原最大の集落ということでしたが、 トタンで囲われた民家の外壁は風が吹くと寒々しく軋み、 コンテナが並ぶバザールは多少活気があったものの、 夕方前にはすっかり人気がなくなって、 哀愁を感じさせる影が西の山から伸びてきます。 ほとんどの家庭に水道はなく、 電球は細々と灯っていればいい方で、ほとんどの時間はぷっつり消えています。 宿のゲストのために用意されるシャワーは、 近くの水場から何度も往復して汲んできた水をストーブで温めたバケツシャワーで、 そのストーブの燃料は家畜の糞と周囲に僅かに生えている草木でした。 冬の寒さはとても厳しく、ひとたび雪が降り積もれば 数百キロ離れた隣町との交流も途絶えてしまうような場所です。 どうしてこんなところに…。 失礼を承知で言えば僕はこんな風に