「不要不急か――不要不急です」。 得体のしれないことばに、わたしたちは振りまわされてきた。そんなことばを2年間使いつづけている日本医師会、その建物そばの書店「BOOKS青いカバ」の店長・小国貴司さんは、2020年3月、つぶやいていた。 それからおよそ2年、東京の古本屋では何が起きていたのか。 ライターの橋本倫史(はしもとともふみ)は、10軒の古本屋に3日間ずつ密着し、そこに流れる時間を、東京の風景を、生活を記録する。 この本は、いまの日本で、東京で、生きて、仕事をする、ありとあらゆる人がお守りとして大切に読みすすめるべき一冊である。 わたしにとっての橋本は、2007年に彼が創刊したリトルマガジン『HB』に始まる。「高田馬場から考える」を掲げた同誌の創刊号を大阪のジュンク堂書店で見かけていらい、新鮮な視点を持ちながら、なつかしさを感じさせる稀有な書き手として、ずっと憧れている。 類書がありそ