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  • 『なぜヴィーガンか?』 シンプルな論理とそれが人びとに与えた影響 - HONZ

    読むたびに思う。ピーター・シンガーの論理はシンプルで、それゆえに強力だ。シンガーの論理に異を唱えようとすると、その反論のほうが小手先の屁理屈のように聞こえてしまう場合も少なくない。そして、シンガーの論理は強力であると同時に、そこから帰結する内容が厳しくもある。シンガーの論理を反駁できないならば、またそれを頭で理解したならば、わたしたちは自らの生き方を変えなければならないはずである。 書は、哲学者ピーター・シンガーの肉に関する論考を集めたものである。シンガーは、「動物解放論」の代表的論者であり、1970年頃から菜主義を実践している。そして、後で紹介するように、その論理によって多くの人たちの生き方を実際に変えてきた人物でもある。 そのタイトルどおり、書はなぜ肉を控えるべきかを説いている。シンガーによれば、そのおもな理由は3つある。すなわち、(1) 動物への配慮、(2) 気候変動の問題

    『なぜヴィーガンか?』 シンプルな論理とそれが人びとに与えた影響 - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2023/08/05
    「利害に対する平等な配慮」。哲学者ピーター・シンガーの肉食に関する論考。買った。
  • 婚活するにはこれを読め!『マッチング・アプリ症候群 婚活沼に棲む人々』 - HONZ

    マッチング・アプリ、まったく未知の領域である。まぁ、66歳既婚者なんだから、当然といえば当然だ。しかし、いまや結婚するカップルの20%が利用するという。知識として知っておくのは悪くなかろうと読み始めたら、いきなり驚きの連続だった。 冒頭で紹介される30代の知人女性Kさん。マッチング・アプリで知り合った男性7人と同時に付き合っているという。へ、二股でもあかんような気がするのに、七股?ヤマタノオロチかよ、ってちょっとちゃうけどびっくりの内容、少し長いが引用する。 事は日替わりで全員と、家に泊まりに来るのは2人で、あとは外でドライブや映画デート費用は相手が出してくれる。少しずつ結婚相手を絞る予定だが、次々に新規の候補が現れるので、いつになっても数が減らない。 おいおい、それってあかんすぎちゃうん。おっちゃんみたいな昭和生まれの倫理観では許されへんで。ちょっと極端な例かもしれないが、マッチング

    婚活するにはこれを読め!『マッチング・アプリ症候群 婚活沼に棲む人々』 - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2023/07/02
    おもしろく読んだ。どろっどろの婚活沼に棲息する男たちの多様性。
  • 友好的なのが何より大事 『ヒトは〈家畜化〉して進化した──私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか』 - HONZ

    ヒトの進化において「協力的なコミュニケーション」が大きな鍵を握ったであろうことは、たびたび指摘されるところである。人がひとりでできることは限られている。単独で野生動物を狩ろうとしても、得られるのはせいぜいウサギくらいだろう。しかし、ほかの人と協力すれば、わたしたちはシカだって野牛だって狩ることができる。また、ほかの人と情報交換すれば、わたしたちは新たな技術などについて伝えあうことができる。というように、その進化史において、協力的なコミュニケーションはヒトに多大なメリットをもたらしたと考えられる。 しかしそれならば、次のような問いがさらに生じても不思議ではないだろう。ヒトはどうやって協力的なコミュニケーションを行うことができるようになったのか。 書は、その問いに対してひとつの回答を与えようとするものである。そして、書が導き出す回答は、原書のタイトル(Survival of the Fri

    友好的なのが何より大事 『ヒトは〈家畜化〉して進化した──私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか』 - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2022/06/28
    かつてのモデルの崩壊。
  • いまを生きる、すべての人に『東京の古本屋』 - HONZ

    「不要不急か――不要不急です」。 得体のしれないことばに、わたしたちは振りまわされてきた。そんなことばを2年間使いつづけている日医師会、その建物そばの書店「BOOKS青いカバ」の店長・小国貴司さんは、2020年3月、つぶやいていた。 それからおよそ2年、東京の古屋では何が起きていたのか。 ライターの橋倫史(はしもとともふみ)は、10軒の古屋に3日間ずつ密着し、そこに流れる時間を、東京の風景を、生活を記録する。 このは、いまの日で、東京で、生きて、仕事をする、ありとあらゆる人がお守りとして大切に読みすすめるべき一冊である。 わたしにとっての橋は、2007年に彼が創刊したリトルマガジン『HB』に始まる。「高田馬場から考える」を掲げた同誌の創刊号を大阪のジュンク堂書店で見かけていらい、新鮮な視点を持ちながら、なつかしさを感じさせる稀有な書き手として、ずっと憧れている。 類書がありそ

    いまを生きる、すべての人に『東京の古本屋』 - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2022/01/01
    街を歩き、人と会う。「構造が変わってしまったんだと思わざるをえない」時代のなかで。
  • 『東京の生活史』『都会の異界 東京23区の島に暮らす』『東京23区×格差と階級』暮らす人にとっての東京 - HONZ

    五輪の話題もようやく落ち着いた。会場となった大都市「東京」の実像について、考えてみるのも良いだろう。 150人の聞き手が150人の「東京にいる人、いた人、いたことのある人」に聞いた人生が1216ページの『東京の生活史』になった。聞き手は公募、語り手は誰だかわからない場合も多く、読み手は何の情報もないまま読み始める。年齢も性別も2人の関係性もわからないが、何か「東京」に関係があることは徐々に明かされていく。こんな途方もない試みのなのに、一切退屈せずに読み終えた。 1人目は終戦で上海から帰国した年配の婦人で、都内などでピアノとともに生活した日々を語る。近所の人なら間違いなく誰だかわかるだろう。 戦後生まれで材木屋から俳優になった人、反差別運動をやっていた両親を持つ1980年代生まれの女性と差別問題、祖母の縁で中国からやってきて中華料理屋を営む男性の幸福感など、どの人の語りもドラマのようだ。

    『東京の生活史』『都会の異界 東京23区の島に暮らす』『東京23区×格差と階級』暮らす人にとっての東京 - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2021/11/15
    「東京」の実像。
  • 『東京の生活史』重さ1425g 150人がそれぞれの東京を語った前代未聞の試み! - HONZ

    150人の聞き手が「東京にいる人、いた人、いたことのある人」150人の語り手から話を聞き、それぞれ一万字にまとめてを作る。上下二段組、1216ページ、重さ1425グラム。前代未聞の試みだ。 聞き手が誰かはクレジットされているが語り手の多くは不明。読み進めていくと性別、年齢、聞き手との関係性が少しずつ判明していく。家族、親族、友人仕事場の同僚など間柄が分かる場合もあるが、最後まで不明も多い。 語り手は喋りたいことを喋り、聞き手は促すだけ。書のために募集された聞き手は、どれくらい「積極的に受動的」になれるか?という研修を受けたようだ。YES/NOチャートのように単純な問いを投げ、語り手の言葉を受け入れ「問わず語り」に徹する。 収録の順番にも法則性はない。男女比も曖昧だ。経験値が全く違うから、最初はジャンルの違う短編小説をひたすら読んでいるような気になる。個人的な体験で似ているのは公募の短

    『東京の生活史』重さ1425g 150人がそれぞれの東京を語った前代未聞の試み! - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2021/10/15
    やがてバラバラだった人生がいくつかの集合体に見えてくる。
  • 『ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと』一緒に走りながら考えたマラソン王国繁栄の秘密 - HONZ

    もう20年以上前になるが、ある芸人が自身の持ちネタのオチに「アフリカの運動会ではいつも世界新記録が出る」というようなセリフを使っていた。そんなことを、書を読んで思い出した。 今の基準で批判しようというのではない。ただ、そのネタには私たちが現在も抱きがちなステレオタイプが表れていたと思う。ネガティブなニュアンスではなかったが、アフリカの子なら身体能力が優れているはずだという思い込みが根底にあっただろう。 現在、世界トップクラスの長距離走者は、エチオピアやケニアなど東アフリカに集中している。東京五輪の男子マラソンでも、ケニアのエリウド・キプチョゲ選手が圧倒的な強さで連覇を果たした。 なぜ彼らは強いのか。「生まれつき才能に恵まれているから」と考える人も多いのではないだろうか。「子どもの頃から山道を走って鍛えられている」、「貧しさから抜け出そうとするハングリー精神がある」といった理由を挙げる人も

    『ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと』一緒に走りながら考えたマラソン王国繁栄の秘密 - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2021/09/12
    彼らは決して1人での練習はしない。集団で走る。相手のペースに合わせて走ることで、自分自身が変わっていく。
  • 音楽で生きる、東京で生きる。『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』 - HONZ

    近田春夫を知っている人は、すでに読んだにちがいない。知らない人は、いますぐ読んでほしい。音楽で生きる、東京で生きる、その2つを味わえる。日のロック、パンク、ヒップホップ、さらにはJ-POPやCM音楽まで網羅した音楽史であり、東京でクールに生きてきた大人の足跡を体感できるだろう。 タイトル「調子悪くてあたりまえ」は、ビブラストーンの名曲からとられている。ご存知ない方は、動画サイトで確かめよう。そのあとで、曲名の意味、そして、ビブラストーンというバンドについて、ぜひ書を開いてもらいたい。 著者は、1951年2月25日、世田谷に生まれる。NHKに勤めたあとTBSに移る父親と、音楽教師の母親を持つ。IQ、知能指数169をたたきだした天才児だったので、慶應幼稚舎に入る。 「僕は春夫君とやっていく自信がないんです・・・」と担任教師が嘆くほどの多動症で、人を笑わせるのが好きだった。にぎやかな場所にい

    音楽で生きる、東京で生きる。『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』 - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2021/02/08
    日本語ラップの先駆者。
  • 『国道16号線 「日本」を創った道』 - HONZ

    私が住む東京都町田市の小田急町田駅の東口の広場には「絹の道」という石碑がある。それをゼミ生に見せてからJR横浜線の下り線に乗り、八王子に向かう。その車中で、なぜ八王子と町田を結ぶこの街道が絹の道と呼ばれるか、学生たちに説明する。 このあたりの多摩丘陵の地形地質が桑畑に向いていて、それが地域の養蚕業を盛んにしたこと。そうして絹製品の産業基盤がこのあたりにあったところに、幕末期に盛んになった生糸輸出で、山梨や長野、群馬の生糸がいったん八王子に集まり、そこから輸出港横浜まで運搬されるルートができたこと。その流通加工拠点であった八王子には富が蓄積されたし、横浜までは生糸を馬の背に乗せて運ぶにも一日では歩ききれないので、行商人たちがその中間地点の町田で一泊してお金を落としたこと。横浜で生糸を売り捌いて懐が暖まった行商人たちが、おそらく帰路についた一泊目の町田で羽根を伸ばしたので町田には町の規模の割り

    『国道16号線 「日本」を創った道』 - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2020/11/24
    (東名阪に次ぐ)日本第4の大都市圏。
  • 『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』世界はくだらない仕事にあふれてる - HONZ

    待ちに待った邦訳がようやく出た。 デヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ』である。 「ブルシット・ジョブ」とは、「クソどうでもいい仕事」のことだ。 もう少し丁寧に説明すると、「なんのためにあるのかわからない、なくなっても誰も困らない仕事」のことである。 近年、私たちの身の回りでブルシット・ジョブが増えている。 そして、確実にこの手の仕事は、働く人々の心身を蝕んでいる。 多くの人がこのことにうっすら気づいていたようで、2013年に著者があるウェブマガジンで「ブルシット・ジョブ現象について」という小論を発表したところ、国際的な反響を呼んだ。書はこの小論をベースに、その後の調査や考察を加えて一冊にまとめたものだ。コロナ禍でエッセンシャル・ワーカーに注目が集まる中、時宜にかなった出版といえる。まさにいま読むべき旬の一冊だ。 著者のデヴィッド・グレーバーは、イギリスの名門大学、ロンドンスクー

    『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』世界はくだらない仕事にあふれてる - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2020/08/26
    世間で常識だと思われている考え方は歴史的な産物に過ぎず、その歴史も意外と浅かったりする。
  • 『スポーツ・アイデンティティ どのスポーツを選ぶかで人生は決まる』「皆が野球」ではない、スポーツ選択を考える - HONZ

    『スポーツ・アイデンティティ どのスポーツを選ぶかで人生は決まる』「皆が野球」ではない、スポーツ選択を考える 著者は編集者、ノンフィクション作家として多くの有名人を取材する中で、一つの仮説を立てるようになる。人の性格はスポーツ歴に影響を受けているのではないか。個人スポーツか集団スポーツか、そして、集団スポーツならばどのポジションを担ったか。書では、多くの取材をもとに、マラソンに野球、サッカー、格闘技にラグビー、ゴルフ、水泳など、各競技の選手や経験者に共通する性格をあぶり出すことが試みられている。 例えば、野球では、投手にはわがままなタイプが多く、捕手は一筋縄ではいかない。サッカーならば、フォワード(FW)は傲慢で、サイドバックは場を和ますいじられ役といった調子だ。これらは想像しやすいが、投手やFWはエゴ丸出しに見えても、常にチームメートへ繊細な意識を向けているというから興味深い。 Jリー

    『スポーツ・アイデンティティ どのスポーツを選ぶかで人生は決まる』「皆が野球」ではない、スポーツ選択を考える - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2020/08/10
    幼少期はよくても、年を重ねるにつれ身体能力だけでは通用しなくなるケースは少なくない。
  • 『ポスト・スポーツの時代』いま、私たちが見ているのは、これまでとは違う「スポーツ」だ - HONZ

    プロスポーツの試合が再開され、スタジアムに観客も戻ってきた。 だが野球もサッカーもすっかり様変わりしてしまった。withコロナ云々を言いたいのではない。もちろんそれもあるが、実は今回のコロナ禍以前に、野球もサッカーも大きく変質していたのだ。いま私たちが目にしているのは、これまでとは違う別の競技であるとすら言えるかもしれない。書はこれを「ポスト・スポーツ」と呼ぶ。 スポーツにどんな変化が生じたのか。そのことにいち早く気がついていたのは、あのイチローだった。昨年、現役引退を発表した記者会見で、イチローはきわめて重要な発言をした。メジャーリーグでの選手生活を振り返り、2001年と2019年とでは、野球の種類が変わってしまったと述べ、現在は「頭を使わなくてもできる野球になりつつある」と危機感を表明したのだ。 ここ数年、メジャーリーグを席巻している「フライボール革命」をご存知だろうか。メジャーでは

    『ポスト・スポーツの時代』いま、私たちが見ているのは、これまでとは違う「スポーツ」だ - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2020/07/18
    スポーツとは何か。
  • 『謎のアジア納豆』 - HONZ

    書店で書を手にとって、巻頭パラパラと数ページめくってからこの解説文で概要を知ろうとする人も多いと思うので、まず結論から言う。 このは傑作だ。あなたの納豆観を覆し、しかも納豆を入り口にアジア中の辺境民族文化の旅へと誘い、さらに現代におけるディープな旅とは何か?という問いかけまでが含まれている。「買おうかな?どうしよっかな?」と悩んでいる暇はない。今すぐレジに持っていって納豆をべながら書を貪るように読まれたい。以上終わり! …というのは解説文としては不親切なので、数ページもらって書の魅力、そして納豆文化の魅力についてガイドしようと思う。申し遅れたが、僕は発酵文化の専門家として、世界各地の不思議な発酵や微生物を訪ねてまわるのを生業としている。文中の著者の問いかけに僕なりに答える形式で、の理解をさらに深める手伝いができれば幸いだ。(ちなみにここから先はネタバレを多数含むので、もう絶

    『謎のアジア納豆』 - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2020/06/12
    食の世界にはまだまだフロンティアが残っている。
  • 『2050年 世界人口大減少』と『人口で語る世界史』2050年以降の世界人口は減少に転じるのか? - HONZ

    経営学者で未来学者のピーター・ドラッカーは、1985年の著書『イノベーションと起業家精神』の中で、未来予測における人口動態(demography)の有用性について、「人口、年齢、雇用、教育、所得など人口構造にかかわる変化ほど明白なものはない。見誤りようがない。予測が容易である。リードタイムまで明らかである」と語っている。 昨年6月に発表された国連報告書『世界人口推計2019年版』によると、世界人口は現在の77億人から2050年には97億人へと、今後30年で20億人増加し、今世紀末頃に110億人でピークに達すると見られる。 その内訳を見ると、予測される人口増加の過半は、インド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ、エチオピア、タンザニア、インドネシア、エジプト、米国の9カ国で生じ、特にサハラ以南のアフリカの人口が倍増し、絶対数ではインドが2027年頃に中国を抜いて、世界で最も人口が多い国になると

    『2050年 世界人口大減少』と『人口で語る世界史』2050年以降の世界人口は減少に転じるのか? - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2020/03/07
    もう何十年も前から分かっていたにも関わらず、日本が人口減少問題に手をつけないできた付けは、とてつもなく大きい。
  • 時系列に沿った「因果の物語」が通じなくなった世の中で生まれた新しい哲学『時間とテクノロジー』 - HONZ

    たとえばあなたが会社員で、「あなたはなぜその部署で働いているのか」と質問されたとしよう。自分で志望した、先輩に推薦された、いきなり指名された、など様々な理由があると思う。そしてあなたは今、その理由を過去に遡り、上司や同僚との会話、これまでの人事移動、そして大学で勉強していた頃の風景を思い返しているかもしれない。 今の自分を鑑みる時、過去を振り返る。過去が今の自分を築いてきたと、無意識のうちに信じている。書ではその無意識な感覚に問いかける。当に過去の出来事が今の自分につながっているのか。自分だけではなく、周りの人々や社会情勢まで視野を広げてみる。この、”世界を時系列・因果関係の中で捉える感覚”は、この先どこまで通用するのだろうか。 書によると、科学の進歩によって私たちの時間の感覚が変わってきている。たとえば音楽について、iTunesなどのネット配信サービスのおかげでその場ですぐに音楽

    時系列に沿った「因果の物語」が通じなくなった世の中で生まれた新しい哲学『時間とテクノロジー』 - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2020/01/18
    著者の思索の道を追体験する面白さ。
  • 『ラディカル・マーケット』ラディカルなマーケットが創造する、平等で寛容で成長する社会とは - HONZ

    書は、マイクロソフト首席研究員兼イェール大学客員研究員のグレン・ワイルと、シカゴ大学ロースクール教授のエリック・ポズナーによる共著である。 34歳の社会工学者・経済学者ワイルは、書を監訳している大阪大学の安田洋祐准教授のプリンストン大学留学時代のオフィスメートで、同大学を首席で卒業して直ぐに大学院に進学し、経済学博士号をわずか1年で取得した大秀才だと言う。 この辺りの詳細は、安田氏が東洋経済オンラインに書いているのでそちらに譲るとして、書はその「ラディカル」(Radical)というタイトル通りに、「過激で急進的で根的な」市場改革の書である。 現代社会のOS(オペレーティングシステム)である資主義は、広い意味での市場の存在を前提に成り立っている。更にその根幹にあるのが、財産の私的所有を保証している私有財産制である。 「(神の)見えざる手」で有名な『国富論』の著者で、「近代経済学の父

    『ラディカル・マーケット』ラディカルなマーケットが創造する、平等で寛容で成長する社会とは - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2020/01/16
    ラディカルでありながらもある意味で楽観的な世界観。
  • 『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス いまからおよそ1万年前、人類は農業を発明した。農業が生まれると、人びとは必要な栄養を効率的に摂取できるようになり、移動性の狩猟採集生活から脱して、好適地に定住するようになった。そして、一部の集住地域では文明が興り、さらには、生産物の余剰を背景にして国家が形成された──。おそらくあなたもそんなストーリーを耳にし、学んだことがあるだろう。 しかし、かくも行き渡っているそのストーリーに対して、書は疑問符を突きつける。なるほど、初期の国家はいずれも農業を基盤とするものであった。だが、人類はなにも農業を手にしたから定住を始めたわけではない(後述)。また、メソポタミアで最初期の国家が誕生したのは、作物栽培と定住の開始から4000年以上も後のことである。それゆえ、「農業→定住→国家」と安直に結び

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2020/01/04
    メソポタミアに最初に現れた大規模定住地は、海と川の水に接する湿地帯に成立していた。
  • 『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち - HONZ

    具体的な数字やデータを示してもダメ。明晰な論理で説いてもムダ。そんなとき、あなたはきっとこう思ってしまうのではないか。「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」。 実際問題、日々の生活でそんな思いを抱いてしまう場面は少なくないだろう。失敗例がすでにいくつもあるのに、それでもまだ無理筋を通そうとする社内のプレゼンター。子育てのあり方をめぐって、何を言っても聞く耳を持ってくれないパートナーなど。また不思議なことに、たとえ高学歴の人であっても、「事実に説得されない」という点ではどうやらほかの人と変わらないようだ。 さて書は、冒頭の問いを切り口としながら、人が他人に対して及ぼす「影響力」について考えようとするものである。心理学と神経科学の知見を織り交ぜつつ、著者は早々に厳しい診断を下す。 多くの人が「こうすれば他人の考えや行動を変えることができる」と信じている方法が、実は間違っていた…。 数字や統

    『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2019/09/03
    快楽で動かし、恐怖で凍りつかせろ。
  • 『140字の戦争 SNSが戦場を変えた』 - HONZ

    21世紀の戦争は、戦車や大砲による物理的な戦闘よりも、主にソーシャルネットワーク(SNS)を使った情報戦が重要になった。SNSによって劇的に様変わりした新しい戦争の姿を描いたのが書である。 ここでいう情報戦とは、相手の情報を奪い取る戦いではなく、いかに自分たちに有利な印象を信じ込ませることができるかといういわゆるプロパガンダ合戦のことだが、従来は国家権力や大手メディアが一方通行にそうした情報を流していたのに対し、新しい戦争では、市民がSNSを用いて自ら語りかけ、人々が参加するかたちで拡散させる。そうしてできあがった人々のネットワークが戦争に深く関与するようになった。 そこで流されてくる情報を著者は「ナラティブ」と表現する。「私たちはいま、事実よりもナラティブを重視する世界に生きている。人びとが判断基準とするのは議論ではなく感情の大袈裟な表出」とし、「議論以上にナラティブが強い影響力を持ち

    『140字の戦争 SNSが戦場を変えた』 - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2019/05/29
    SNSは「絆を破壊し、人びとを分断する」。
  • 『掃除で心は磨けるのか いま、学校で起きている奇妙なこと』ある特定の方向へ誘導する教育の問題 - HONZ

    小学校に通う子どもの通知表を見ていたときのことだ。教科ごとに4つの評価項目が設けられているが、「社会」のところに「おや?」と目が留まった。項目がすべて同じ文章になっている。「もしかして誤記?」と思ったのだ。 よくよく見ると同じ文章ではなかった。だが、勘違いするのも無理はない。「我が国の歴史や伝統、世界の国々に〜」「我が国の歴史や伝統の意味について考え〜」など冒頭がすべて同じ文言だったのだから。なにこれ? 2017年、初めて行われた道徳の教科書検定が話題となった。ある教科書に載った教材に文部科学省が意見をつけ、教材に取り上げられた店が「パン屋」から「和菓子屋」に変更されたのだ。 文科省は具体的な差し替え箇所を指示したわけではないというが、教科書全体を通して「我が国や郷土の文化に親しみ、愛着をもつ」点が不足していたと説明している。パン屋よりも和菓子屋のほうが我が国の伝統にかなっているということ

    『掃除で心は磨けるのか いま、学校で起きている奇妙なこと』ある特定の方向へ誘導する教育の問題 - HONZ
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2019/04/21
    掃除で批判的精神は磨けるだろうか。