日本海の島根沖に浮かぶ隠岐諸島の一つ、海士(あま)町。かつて人口流出と高齢化で無人島化さえ危惧されたが、今では若い移住者が増え続けて人口の2割を占める。移住者と地元の人々が交わり、活気がよみがえってきた。一体この島に何が起きたのか。 八方ふさがり 海士町(中ノ島)に行くには、鳥取県の境港(さかいみなと)からフェリーで約4時間。あるいは大阪・伊丹空港から、隠岐諸島で一番大きな島後(どうご)まで空路で約40分、そこから船で約1時間揺られてようやくたどり着く。秋から冬にかけ日本海は荒れ、欠航はざら。海士町は、日本海に浮かぶ小さな島だ。 鎌倉時代の後鳥羽上皇の配流(はいる)地として絶海の孤島のイメージが浮かびがちだが、実際は自然環境に恵まれた美しい島だ。透明度の高い海に囲まれ、ユネスコの「世界ジオパーク」に認定されただけあって、起伏が激しい。山間部を進むと、突然平野が開け水田が目に飛び込んで来る。