結婚して妻になった途端、女はオンナでなくなるのだろうか。 かつてはあれほど自分を求めた夫も、結婚後は淡白になり、ただ日々の生活を営むパートナーになった。 結婚生活を墓場のようだと形容する人もいれば、結婚は多くの喜びを得るものだという人もいる。 妻でありながらも葛藤を抱える、豊洲在住の遥、港区在住のマキコ、目黒在住の亜希、光が丘在住の紗弥香の4人。 自らの欲望に正直に生き続ける女達が下した、それぞれの決断とは…。 こんなに簡単なことに、気がつかなかったなんて 「神尾さん、この袋の名刺ファイリングしといて。」 はい、と答えた遥は、ずっしりと重い紙袋を受け取ると、窓の外に見える高層ビル群をゆっくりと眺めた。 驚くほど短かった義母の入院後、しばらくは同じタワーに住む2家族分の家事を担っていた遥であったが、義母の容体は異様な速さで回復......