東京大学大学院法学政治学研究科教授 太 田 勝 造 日本人の契約観を法社会学的な調査で明らかにしようと,加藤雅信名古屋大 学法学部教授を中心とし,筆者もメンバーである「法意識国際比較研究会」は, 22の国や地域で法学部生と経営学・商学部生を対象として質問票調査を行い, 法学部生1万件,経営学・商学部生7千件の合計1万7千件ほどのデータを集 めた.この調査の日本部分の中間報告は『ジュリスト』1096 号(1996年)に 「特集・日本人の契約観と法意識」として掲載されている. この契約意識調査の結果には,法と言語に関して興味深い知見も得られてい るように思われる.すなわち,法学部生と経営学・商学部生との間の契約遵守 意識の差は,統計的に有意に大きいことが分かった(46頁).すると,法律を 学んだ法学部生は契約を遵守しようとし,法律を学んでいない経営学・商学部 生は契約を遵守しようとする程度が