日本国際経済学会第62回全国大会自由論題報告(2003 年 10 月 5 日)原稿 国際金融のトリレンマ論の陥穽 細居俊明(高知短期大学) 1.課題 「国際金融のトリレンマ」の批判的検討 本稿は一般に「国際金融のトリレンマ」といわれる命題−すなわち①自由な資本移動、②固定 相場、③独立した金融政策の3つは鼎立しない−について批判的な検討を行うものである。 トリレンマ論は広く受容され、また実際に現状分析に際して、特に最近ではアジア通貨危機の 分析に際して頻繁に使われ、典型的には、資本自由化は変動相場制か強固な固定相場制か、いず れかの為替制度の選択を迫るようになっている−いわゆる「両極の解(two corner solutions)」− といった評価にもつながっている。 表1は主な為替制度を整理したものだが、 資本自由化が進み、 移動が活発になっていくと、中間的な制度は通貨投機に脆弱な、