6年前の3月、東日本大震災の津波をかぶった東京電力福島第一原子力発電所は、原子炉建屋の爆発を起こした。放射性物質が飛散し、一時は16万人以上の住民が避難を余儀なくされた。今もなお約8万人が避難生活を続けてはいるものの、除染が進み、福島第一原発そのものも、ほとんど整備された工事現場のようになっている。 事故当時は馴染みのなかった放射線に関する基礎知識もある程度広まり、荒唐無稽なデマゴーグを真に受けて福島県産農水産物を忌避する人もごく一部にまで落ち着いたように見える。しかし、放射線リテラシーが常識になってきた一方で、福島第一原発の廃炉の実態は我々国民に周知されているとは言えない。 その原因は大きく3つあるようだ。まず1つ目は、原子力発電の構造そのものが科学的に高度で複雑であり、理解が簡単ではないこと。2つ目は、原子力発電そのものの是非をめぐる政治的な対立があること。そして3つ目は、原子力発電所