《すばる》2010年12月号に、小説家の藤野可織さんが「フィギュアスケートのシーズン」というエッセイを書いている。 藤野さんにとってフィギュアスケートとは、〈エアロビクスの大会〉的な珍妙さと〈ローザンヌ国際バレエコンクール〉的な壮麗さが〈寄せては返す〉ものであり(そうそう、フィギュアスケートとは妙ちきりんかつ壮麗なものです)、〈珍妙さと壮麗さに動揺するあまり、私はフィギュアスケートのこととなるとすっかり取り乱すようになってしまった〉のだという。 これはあのスポーツに私が感じているものとほぼ同じだ。作家とはなんとうまいことを書くものだろう。 ただし私は、ここ数年のブームに引きずられて熱くなったにわかファンに過ぎない。〔…〕 それにしたって、もう5、6年だ。ファン歴は浅いが、それでもこれだけの期間入れ込んでいれば少しは目が肥えようものなのに、〔…〕ジャンプの種類もろくに見分けることができない。