コーチの愛した数式 グレッグ・ジャクソンのゲーム理論 グレッグ・ジャクソン(38)は、ズボンの後ろポケットからメモ帳を取り出すと、丸と線で出来た蜘蛛の巣状の図をスケッチし始めた。ゲームの木だ。ゲーム理論の分野で、意志決定の順序を分析するために使われるグラフである。ゲームの木では、一つ一つの丸は「ノード」と呼ばれ、特定の状態を指している。線は「枝」とも呼ばれ、意志決定そのものを指す。ゲームの木は、引き分けか、どちらかのプレイヤーの勝ちをしめす最終ノードで終わる。ジャクソンによると、MMAの試合における攻防は、あるひとりの選手から見たゲームの木で説明ができるのだという。 アルバカーキーのジムでは、ジョン・ジョーンズがショーン・ジョーダンとスパーリングをしている。最初の段階では、2人の選手が離れて立っている。ジャクソンはまず、その状態を示すノードを書く。そこから3本の枝を書く。それぞれ、ジョーン