篠山紀信氏は現在、日本で最も有名な写真家の1人だろう。ジョン・レノンとオノヨーコ、宮沢りえ、ダライ・ラマ14世、AKB48など、常に時代の先端を行く人物を撮り続けてきた。数々の衝撃的な作品は、社会に大きな波紋を呼び、今も多くの評価と批判を集めている。 その篠山氏が70歳にして、新境地を開く写真集『ATOKATA』を出版する。題材は東日本大震災の「被災地」だ。 そう聞くと、被災者の絶望から復興への祈りといったテーマの写真集を想像するかもしれない。だが、この写真集のテーマは自然に対する「畏怖と畏敬」。静かな「無常感」が漂う被災地の光景を切り取った写真は、数ある被災地の写真の中でも異彩を放っている。 (聞き手は広岡 延隆) ――現地に行った時、どのように感じたでしょうか。 ただ呆然としました。 3月11日午後2時46分に東日本大震災が起きて、本当に大量の映像や写真が押し寄せてきました。私も自分が