ロイター通信という、今なお世界を代表する通信社で働かれた後、第二次大戦中はBSCという英国の諜報機関で働き、戦争終結後にそれまでの経験を生かして、かの007シリーズを書き始めました。 …と書くと、映画に出てくるようなアクションだの破壊工作だのも、そうした実体験に基づくのかと言えば、どうやらそうでも無さそう。と言うのも、今年3月になって、イギリスのBBC放送で当時の部下のお孫さんが証言をなさっているからです。しかも、このお孫さん(ラスティン・ローラット氏)はBBCの記者。奇妙な縁と言えましょうか。 しかも、明かされた新事実は、映画や小説とは違う、ある種のほろ苦さを秘めていたのでした。 患者が発した謎めいた問い「あなたのおじいさんは…」 きっかけは、ひょんな事からでした。ローラット氏の従兄弟に当たる、アレクサンダー・イオニデス氏が、ロンドンの病院で眼科医として勤務していた時の事。ある日、患者の