『存在論的、郵便的―ジャック・デリダについて』は、『アクロイド殺し』(アガサ・クリスティ)である。 デリダの著作は、前期と後期に分けることができる。 (1)前期。独立したテクストとして読める「論文」や「著作」としての体裁を保っていた時期。フッサールの『幾何学の起源』の序説から始まり、『声と現象』『グラマトロジーについて(邦題:根源の彼方に)』『エクリチュールと差異』を経て、『余白』に至るまでの著作が書かれた時期。 (2)後期。別のテクストの引用が入り乱れ、論述する意味内容の断片化・重層化が飽和に達し、造語・新概念が増殖し、巨大な暗号群と化してゆく時期。『散種』『弔鐘』『絵画における真実』『葉書』といった著作が書かれた時期。 (蛇足を加えれば、後期デリダには法と政治、歴史と倫理的責任を問う著作群、たとえば『他の岬』『法の力』などが存在する。) ここで、プロブレマティックが為される。前期デリダ
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