この4月、三井東圧化学と三井石化の合併交渉が報じられた。両社は直後に交渉凍結を発表したが、弱小な日本の化学メーカーが生き残るには、合併・買収(M&A)による企業規模の拡大、得意な製品での国際シェア獲得しかないことを印象づけた。だが、世界は進んでいる。この直後に米デュポンがアクリル事業を、英ICIがナイロン事業を相互に譲渡するというドラスチックな事業スワップを発表した。再編の入り口に立ったばかりの日本の遅れがいやでも目立つことになった。 その化学業界の中で、独り泰然と構えている男がいる。大日本インキ化学工業(DIC)社長の川村茂邦だ。1986年に米国大手インキメーカーのサンケミカル、翌年にはやはり米大手の樹脂メーカー、ライヒホールド・ケミカルズの買収を済ませている。これで、DICグループは、世界の印刷インキで15%のトップシェア、インキ原料の有機顔料でもトップの独BASFに迫る20%以上のシ