1.脳の特定の領域は犯罪を引き起こす 脳はひとの心,そのものである.このため脳の病気がひとの心を変えてしまうことがある.つまり,性格や道徳心を変えてしまい,犯罪や暴力につながることさえある.優秀なテキサス大学の学生であったCharles Whitemanは,右側頭葉の脳腫瘍のため性格が変わり,母・妻を含む16人を射殺した(テキサスタワー乱射事件;図Aは新聞記事).脳腫瘍が扁桃核を圧迫し,暴力衝動を誘発していたと推測された.以前,ブログで紹介した,まじめな鉄道建築技術者であったPhineas Gageは,爆発事故で鉄パイプが左目の下から前頭葉の腹側正中前頭前皮質(ventromedial prefrontal cortex; vmPFC)に突き刺さったあと性格が一変し,反社会的,下品で決断のできない人間になった(アメリカの鉄梃事件:図BC).これらは稀な事例ではなく,日常でも前頭側頭型認知症