ブックマーク / hirokimochizuki.hatenablog.com (25)

  • 自己責任を求める成功者たちにつけるクスリ - 望月優大のブログ

    田圭佑氏のツイートが話題になっていた。若い世代の自殺に関するニュースを取り上げて「他人のせいにするな!政治のせいにするな!!」と吼えている。ああ、このツイートは見たくなかった。好きなサッカー選手であるだけに個人的には残念な気持ちになった。 田氏が取り上げている記事はこちら。 記事を一目読んでみていただければわかる通り、田氏が言うような「他人のせい」とか「政治のせい」とかそういった内容についての記述がある記事ではない。これを読んであのような書き込みをするということは、彼が「自殺」という問題を考えるうえでのある種の思い込み、「自殺者は自分の苦境を「他人や政治のせい」にして自死したのだろう」といった類の思い込みがあるからだろうと思う。若者に対して強く生きるように鼓舞したいという彼の気持ちはわからなくもないが、この文脈で使うべき言葉、そして言葉遣いだとは到底思えなかった。 平凡な、物言いでは

    自己責任を求める成功者たちにつけるクスリ - 望月優大のブログ
  • 鈴木謙介氏の整理に沿ってーー経産省「次官・若手ペーパー」論(3) - 望月優大のブログ

    社会学者の鈴木謙介氏が件のペーパーをもとに始まった議論に対してある種の総括(?)的なブログ記事を書かれていた。鈴木氏のことは昔から尊敬しており、過去に氏の著作のいくつかを読んできたのはもちろんのこと、講演を聞きにいったこともある。記事中で私のブログも紹介くださっていたので、勝手に胸をお借りする気持ちになってアンサーブログという形でまとめておきたい。 私の過去記事はこちら。 鈴木氏の趣旨は明快で、記事タイトルの「選択肢を理解する」の通りである。すなわち「どこに論点の中心があって、何が対立していて、そして僕たちに示されているのはどのような選択肢なのかということが明らかになっていない」ので、それを明らかにしようということである。 私も二目の記事で「どこに国家観や政治思想上の大きな分岐が走っているかを正しく認識したうえで自分の思考を深めてみていただければと思う」と書いていたが、それと基的に同趣

    鈴木謙介氏の整理に沿ってーー経産省「次官・若手ペーパー」論(3) - 望月優大のブログ
  • 経産省「次官・若手ペーパー」に対するある一つの「擬似的な批判」をめぐって - 望月優大のブログ

    先日こちらのエントリを書いたところかなり大きな反響があった。 その後、件の「次官・若手ペーパー」に対する応答が他所からもいくつかなされていたが、そのなかに渡瀬裕哉氏という方によるかなり強めの批判記事があった。この方のことは存じ上げなかったが、私とはだいぶスタンスの違う議論をされているようなので、自分の立ち位置を明確にするためにも簡単に取り上げさせていただく。(なお、今回も前回記事と同様、個人の人格に対する攻撃を行う意図は微塵もなく、議論の整理が目的であることを明記する。) 「時代遅れのエリートが作ったゴミ」発言者に訊く!若手経産官僚のペーパーに感じた違和感とは。 | 一般社団法人ユースデモクラシー推進機構 どんな方か知らない方もいらっしゃるかもしれないので、プロフィールを上記の記事より転載する。読むに、ティーパーティー運動にシンパシーのあるリバタリアン的な志向性をもった方なのであろう。 渡

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  • 経産省「次官・若手ペーパー」に対する元同僚からの応答 - 望月優大のブログ

    経済産業省の「次官・若手プロジェクト」によるペーパーが話題になっていた。私自身、新卒時に同省で働いていたのだが、このペーパーの作成に私の(個人的に親しい)同期なども関わっているようだ。 不安な個人、立ちすくむ国家 〜モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか〜 平成29年5月 次官・若手プロジェクト | 産業構造審議会総会(第20回)‐配布資料 | 経済産業省 したがって、以下に述べていくことについては、このプロジェクトの参加メンバーに対する人格攻撃の意味合いをまったく持たず、このペーパーが提案する国家観及び社会像そのものに対して応答していくものである。あらかじめ述べておくが、私の意見の基調は「反論」のそれである。しかし繰り返しになるが、その目的は特定の誰かへの攻撃ではなく、政府が発表しかつ社会的に話題になっている資料について、そこでなされている議論の整理と、別の視点を提供することだけをこの文

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  • 上野千鶴子氏の発言を読んで思ったこと。 - 望月優大のブログ

    上野千鶴子氏の中日新聞紙上での発言が話題になっていました。炎上と言ってよいかと思います。上野氏の発言はこちらで全文読むことができます。Togetterもできていました。 この国のかたち 3人の論者に聞く|考える広場|朝夕刊|中日新聞プラス 上野千鶴子「日人は多文化共生に耐えられないから移民を入れるのは無理。平等に貧しくなろう」 - Togetterまとめ 上野氏の発言を簡単にまとめます。カギカッコの中は引用です。 日は今転機にある。最大の要因は人口構造の変化。 人口を維持するには自然増か社会増しかない。自然増は無理だから社会増、すなわち移民の受け入れしか方法がない。 したがって、日には次の選択肢がある。「移民を入れて活力ある社会をつくる一方、社会的不公正と抑圧と治安悪化に苦しむ国にするのか、難民を含めて外国人に門戸を閉ざし、このままゆっくり衰退していくのか。」 「移民政策について言う

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  • 難民受け入れ等に関するトランプ米大統領令「米国への外国人テロリストの入国から国民を保護する」について - 望月優大のブログ

    1/27日金曜日に署名された米大統領令について情報を整理しておきたい。トランプ大統領の就任以降、毎日のように大統領令が出されているが、その一つについてである。 シリア難民の受け入れ停止やシリアを始めとする7カ国の人々に対するビザの発給停止など様々な措置を含むこの大統領令には “Protecting the Nation From Foreign Terrorist Entry Into the United States.” というタイトルがついている。日語にすると「米国への外国人テロリストの入国から国民を保護する」となる。 大統領令の英語全文がNew York Timesにアップされている。大統領令の日語全訳はまだ目にしていない。 この大統領令にはINA (Immigration and Nationality Act ; 移民国籍法) やU.S.C. (United States

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  • 全訳:ドナルド・トランプ「厳格な審査に関する最近の大統領令についての声明」 - 望月優大のブログ

    トランプ大統領がつい先ほど1/29 18:16(日時間1/30 8:16)にFacebookで出した声明を全訳した。Donald J. Trump - Statement Regarding Recent Executive... | Facebook この記事の内容は以下の通り。 全訳:「厳格な審査に関する最近の大統領令についての声明」 トランプの政策はオバマのそれと当に似ているのか トランプの声明はBreitbartの記事を元にしている可能性がある 声明直前のツイート 全訳:「厳格な審査に関する最近の大統領令についての声明」 「厳格な審査に関する最近の大統領令についての声明」 Statement Regarding Recent Executive Order Concerning Extreme Vetting アメリカは移民たちの誇り高き国であり、私たちは抑圧から逃れてくる人々

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  • 「ラストベルトの反乱」という神話。白人労働者たちがトランプに寝返ったというのは本当か。 - 望月優大のブログ

    Slateに「ラストベルトの反乱という神話」という記事があがっていました。面白い記事だったので内容を紹介します。著者は南カリフォルニア大学法学部の教授とヨーク大学博士課程の学生の二人です。 The myth of the Rust Belt revolt. トランプが勝った理由、クリントンが負けた理由として、白人労働者階級の反乱が頻繁に語られました。すなわち現状に不満を抱える白人労働者たちによる民主党から共和党への寝返りが起きたのではないか、というストーリーです。 特に地理的には「ラストベルト rust belt」と呼ばれる、カナダに近い中西部から大西洋岸にわたって広がるかつての工業地帯でこうした反乱が集中的に起こり、それがトランプの勝利を帰結したのではないか、という考えが多く語られました。 改めてアメリカの州名を眺めてみる 先の記事では、2012年と2016年の両大統領選挙における、アイ

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  • トルコというダムは決壊するのか - 望月優大のブログ

    いまトルコについて考えることは質的なことである。 トルコについて考える経験を通じて、自由民主主義を奉じる先進諸国に生きる人々は、自分たちの暮らしがどんな基盤に拠って立っているのかを理解する。それはひどく脆弱な基盤であり、少しの変化で動揺してしまうほどのものだ。 そして、いままさにその基盤が危機にさらされようとしている。 直接的に言えば、今年の3月に結ばれたEU-トルコ間での合意によってトルコ経由でのEU諸国への難民流入が大きく抑制されていたのだが、その合意自体が現在危機に瀕している。 Migrant crisis: Turkey threatens EU with new surge - BBC News トルコ大統領「移民に国境を開放」、加盟交渉渋るEUに脅し | AFPBB News この記事ではその危機について書いていく。 「EU-トルコ間合意」の成立と動揺 難民の「ダム」としての

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  • 日本の貧困は「降格する貧困」に近づいている。セルジュ・ポーガム『貧困の基本形態』講演から。 - 望月優大のブログ

    「はしごの下にいるんだよ。それ以外におれたちが誰なのかをはっきりさせる言葉があるのか。おれたちははしごの下にいて、うやわず、それだけさ。おれたちのための言葉なんてない。はしごの下には工員がいて……やがて上に上がっていく。でも、おれたちは?失業者じゃない、工員じゃない、何でもない、存在しないんだよ!社会の乞だ。それがすべてさ。何者でもないんだ!」(工場勤務歴20年以上の41歳RMI受給者の語り) セルジュ・ポーガム『貧困の基形態』終章の冒頭に掲げられたエピグラフ 10/22に現代フランスを代表する社会学者であり、貧困の社会学で有名なセルジュ・ポーガム教授の講演に行きました。講演のタイトルは「貧困の基形態 日的特殊性の有無について」となっており、今年日語訳された『貧困の基形態』のタイトルをそのまま掲げつつ、さらに日貧困についても語ることが期待されました。 日仏会館フランス事

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  • 組織に潰されないための離脱・発言・忠誠 - 望月優大のブログ

    厚労省から過労死白書が発表された。 過労死等防止対策白書 |厚生労働省 長時間労働に耐えられなくて、上司や同僚に会うのがいやで、勤め先のビルを見るのがいやで、そのために精神を壊したり、命を絶ったりする人の数が少しでも減ってほしいと心の底から思う。 信じられないほどの長時間労働、無意味に思える単純作業、権力を誇示するためだけの儀礼的なルール、そういったものも人並みには経験してきた。どんなに不快でもちっぽけな自分にはどうすることもできない、そんな無力感と常にセット売りだった。 アルバート・ハーシュマンという20世紀ドイツ政治経済学者がいる。彼は、組織に所属する個人が直面する問題に対して、個人の側が取れるアクションを大きく3つの型に整理した。1970年のことだ。 離脱(exit) 発言(voice) 忠誠(loyalty) 「離脱」はわかりやすい。組織のメンバーであることをやめること。言葉のポ

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  • 「性器の傷跡を見ればどのグループの仕業かわかる」デニ・ムクウェゲ医師がコンゴの紛争資源と組織的性暴力について語ったこと - 望月優大のブログ

    「性器の傷跡を見ればどのグループの仕業かわかる」 コンゴのデニ・ムクウェゲ医師の講演を聞いて、この言葉が今も頭に残っています。その背景にどういう意味、そして社会的な構造があるか、自分に理解できた範囲で共有できればと思います。 デニ・ムクウェゲ医師 ムクウェゲ医師はコンゴ民主共和国(DRC ; Democratic Republic of Congo)の医師でノーベル平和賞の命とも言われています。コンゴの現状を伝えるアドボカシーのために世界を回っており、その途上でいま日に来ています。10/4に東京大学で行われた講演会を聞きに行ってきました。 デニ・ムクウェゲ医師講演会:コンゴ東部における性暴力と紛争鉱物 | イベント | 東京大学 ムクウェゲ医師及びムクウェゲ医師の日招聘に尽力された方々によるアドボカシー活動にほんの少しでも貢献できればと思い、このエントリを書いています。 米川正子氏に

    「性器の傷跡を見ればどのグループの仕業かわかる」デニ・ムクウェゲ医師がコンゴの紛争資源と組織的性暴力について語ったこと - 望月優大のブログ
  • 日本語ラップの最高さを改めて実感できる最近のMVを10本 - 望月優大のブログ

    最近いいなと思ったMVをただただ紹介していきます。とにかく全曲必聴ですよ。 ①LIBROのニューアルバムついに出たー! ②フリースタイルダンジョンでお茶の間にも衝撃を与えた崇勲。音源もいいぞー! ③ベテランの新曲も相変わらずかっこいいんだわあ。。 ④ド名曲。アルバムも良かったです。 ⑤リハビリマーシーは外せないぜメーン。 ⑥テレビでも塊すぎる才能を披露するこの兄弟。宝。 ⑦才能と言えばjjj。C.O.S.A.のラップも熱い。 ⑧jjjのセンスアゲイン。トラックもラップも良い。 ⑨jjj x KID FRESINOって黄金すぎるやつ。 ⑩ラストはSTUTS。客演含めてアルバム全曲ハイクオリティ。 番外編:そんなSTUTSのインタビュー。ヒップホップの素晴らしさが詰まってる。 ほとんど最近のMVばかり。こんな短期間にこんなにも素晴らしい楽曲たちが生まれるこの日語ラップというカルチャー。。アツ

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  • 名門大学の卒業生に向けてオバマが語ったこと。 - 望月優大のブログ

    オバマ大統領が名門ラトガース大学の卒業生に贈ったスピーチが素晴らしかったので紹介します。既出の報道ではトランプ批判的な文脈が強調されていましたが、それを差し置いてもとても良い内容でした。40分超のスピーチを全文取り上げるのは難しいので、後半部分から3つのパートだけ紹介します。※文脈とりづらい箇所は文意を変えない範囲で削っています。(全文はこちら) (White Houseより) 統治者の資質と市民の資質。知性について。 トランプ現象に暗に言及しているパートの一つです。ただ、統治者や政治家だけでなく、一般の市民について語っているところがオバマ大統領らしいと思いました。 事実、エビデンス、理性、論理、科学の理解。これらは良いものです。これらは政策をつくる人々に私たちが求める資質です。そして、これらの資質は、市民としての私たち自身のなかで、ずっと耕し続けたい資質でもあります。それは明らかだと思い

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  • イランは危険で、飯がまずくて、カルチャーも歴史もないただのでかい砂漠だ。だからDON'T GO TO IRAN。 - 望月優大のブログ

    DON'T GO TO IRAN。直訳すると「イランに行くな」ってタイトルの動画なのですが、Twitterで流れてきて観た瞬間、「うおおイラン行きたい!」ってなりました。学生のころ北西部に数日行ったきりなのでまた行きたい。 イランってこんなところにあって、アフガニスタンとイラクに挟まれている・・・そしてイラクの先にはシリア。実は北西部がトルコと国境を接していて、このあたりはイラクやシリア、トルコにまたがってクルド人がたくさん居住しているエリアです(ここの陸路国境越えはつらかった・・) 。 (Google Mapsより) ほかにも東にパキスタンやトルクメニスタン、西にアゼルバイジャンなんかとも国境を接しているんですね。ペルシャ湾を挟んでサウジアラビアやUAEなどのアラブ諸国ともかなり近い。数ヶ月前にサウジと断交!ってかなり緊張が高まってましたがあれどうなったのだろう。ちなみにイランはアラブで

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  • 熊本地震の被災者以外の方へ。「自分の防災」と向き合えるのはきっと今だけです。 - 望月優大のブログ

    地震の被災者以外の方へ。このブログは、いまこのブログを落ち着いて読むことができる状態にある人に向けて書いています。 現地で大きな被害に遭っている方の助けになりたいという気持ちから寄付をしたり、有用な情報をシェアしたりすることは大事なことだと思います(情報のシェアはきちんとソースを確認し、かつ必要だと考える範囲で行いましょう)。 ただ、いま当にすべきことなのは、自分が今日、明日大規模な地震に遭ったらどうすればいよいだろうと自分の頭で考えてみることではないでしょうか。なぜなら、そうすることができるのは「今」しかないからです。 こちらの記事で大木聖子先生という地震学や防災教育をされている学者の方の言葉を読みました。とても大切なことが書いてあったので紹介させてください。 地震はいつどこで起きるかわからない 政府は、今回の地震を起こしたと考えられる日奈久(ひなぐ)断層帯を含む九州南部の区域で、

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  • パナマ文書問題を見る視点② 底辺への競争 - 望月優大のブログ

    一昨日パナマ文書問題を考える前提として、タックスヘイブン問題の構造を簡単にまとめた。そこでは、資のグローバルな還流に対する国家権力の徴税能力の限界ということを書いたのだが、国家が自らの徴税能力を強化する(例えば移転価格税制を取り入れる)こと以外にやっていることがある。それがいわゆる「底辺への競争 Race to the bottom」だ。 底辺への競争とは、市場から生み出される資金を出来るだけ多く自国内に滞留させるために、各国が企業にとって良い条件を提示しようと、法人税や労働基準、環境基準等の引き下げを競い合う状況のことである。 『21世紀の資』の著者、トマ・ピケティもパナマ文書に関する寄稿記事のなかで法人税の引き下げ競争から脱却する必要を論じている。直訳調で読みにくいかもしれないが、原文併記で紹介する。 ヨーロッパにおいて、大企業の利益に対する税制についての財務当局同士の競争が新たな

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  • パナマ文書問題を見る視点 - 望月優大のブログ

    パナマ文書問題は、話の前提としてタックスヘイブン問題の構造がわからないと理解できないと思うので簡単にまとめる。基的な知識は志賀櫻『タックス・ヘイブン』を読むことによって得られる。 タックスヘイブン問題は、国家権力の徴税能力の限界という問題と言い換えることができる。「公法は水際で止まる」という言葉にある通り、ある国の法律に則って行使される徴税権は、他国での経済活動に対して直接執行することが基的にできない。この大前提のもとに、タックスヘイブン問題を理解する必要がある。 タックスヘイブンとは、通常の国や地域に比べて、税率が著しく低い国や地域のことだ。また、金融取引に関する情報を現地の政府がきちんと認識していなかったり、認識していたとしても厳重に秘密にしていたりするという特徴もある。違法な可能性のある資金の流れを把握し、取り締まるためには、タックスヘイブンの政府から関連する情報をもらえれば良さ

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  • 『サウルの息子』とは誰か。死の大量処理という単純労働のあとで。 - 望月優大のブログ

    先週末、新宿のシネマカリテで『サウルの息子』という傑作を観た。 描かれるのは、1944年10月のアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所とそこに収容されるユダヤ人たち。特にサウル・アウスランダーというハンガリー出身のユダヤ人、彼の顔が至近距離のカメラから徹底的に映し出される。サウルはゾンダーコマンドである。 ゾンダーコマンドとは、ナチスが選抜した、同胞であるユダヤ人の死体処理に従事する特殊部隊のことである。(公式HPより) ゾンダーコマンドの労働 「同胞であるユダヤ人の屍体処理」、これだけでは伝わるものも伝わらない。彼の職場はユダヤ人を集団で殺害するガス室であり、その脇にある脱衣所であり、死体をまとめて積み上げる死体置き場であり、それらを地上に持ち上げるエレベーターであり、死体を焼却する焼却場であり、そうして産出された大量の灰をシャベルで投げ捨てる川岸である。 ゾンダーコマンドはユダヤ人であ

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  • 家族主義的福祉からの脱出。17年前にエスピン=アンデルセンが日本について語ったこと。 - 望月優大のブログ

    イエスタ・エスピン=アンデルセンという福祉国家論(正確には福祉レジーム論)の大家がいる。デンマーク人の学者で、20世紀の福祉レジームを「社会民主主義的」(北欧諸国等)、「保守主義的」(ヨーロッパ大陸諸国等)、「自由主義的」(アングロ・サクソン諸国等)という3つの類型に分けて論じたことで知られる。 昨今の保育園問題を機に、にわかに日の社会保障制度やシステムについても改革の機運が高まってきたようなので、彼がかつて日社会の未来について語っていたことを改めて知るのも良いかなと思う。1999年の『ポスト工業経済の社会的基礎』というには日語版序文があって、17年前に書かれたとは思えないほど、いま取りざたされている問題の質が描出されている。ページ数にしてわずか6頁の小文である。 ポスト工業経済の社会的基礎―市場・福祉国家・家族の政治経済学 作者: G.エスピン‐アンデルセン,Gosta Esp

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