ブックマーク / saebou.hatenablog.com (6)

  • 二級市民には意見を伝える手段すらない〜『サフラジェット』(『未来を花束にして』) - Commentarius Saevus

    『サフラジェット』(『未来を花束にして』というタイトルだが、全く酷い日語タイトルである)を見てきた。1912年のロンドンを舞台に、洗濯工場でクズ上司のセクシャルハラスメントに苦しみながら働くモード(キャリー・マリガン)が女性参政権運動に参加するようになり、サフラジェットの闘士として戦う様子を描いた作品である。 全体としては、これまでミドルクラス以上の活動家が注目されがちだった女性参政権運動について、ワーキングクラスの女性たちに焦点をあてる近年の研究成果を反映した作品になっている(これについてはCarol Dyhouse, Girl Trouble: Panic and Progress in the History of Young Womenのレビューでちょっと触れたことがある)。サフラジェットというのはこの映画にも出てきたWSPUのメンバーを中心とする戦闘的な女性参政権活動家のことで

    二級市民には意見を伝える手段すらない〜『サフラジェット』(『未来を花束にして』) - Commentarius Saevus
  • ちゃんとした恋愛映画〜『デッドプール』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『デッドプール』を見てきた。 話はたいへん単純な復讐劇で、悪党のせいでアイデンティティと愛を失った男が復讐を遂げるというものである。主人公ウェイド(ライアン・レイノルズ)は恋人ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)と幸せに暮らしていたが、ある日突然ガンが発覚。治療のため怪しい人体実験に参加するが、このせいで皮膚がただれた不死身の超人になってしまう。ウェイドはデッドプールという変名で復讐に邁進するが、変わり果てた姿になってしまったためヴァネッサに再会したら拒絶されるのではと不安に思っており、自分が死んだと信じているヴァネッサの前に姿を現すことをためらい続ける。ところがヴァネッサが敵であるフランシスに誘拐され… ところが、この単純な復讐譚を時系列をバラバラにして、さらに独白、傍白、第四の壁の突破(これ全部違うので注意)などいろいろなテクニックを使って撮影しているので、話がものすごくシンプルなわりに

    ちゃんとした恋愛映画〜『デッドプール』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • 美しい映画の終わりは…〜『山猫』4K修復版 - Commentarius Saevus

    ルキノ・ヴィスコンティ監督『山』の修復版回顧上映を恵比寿ガーデンシネマで見てきた。 イタリア統一運動を背景に貴族社会の終焉を描く歴史映画だが、ストーリーじたいにはそんなに起伏があるわけではない。主人公であるシチリアの貴族サリーナ公(バート・ランカスター)は内省的で(しかも映画が進むとどんどんこの内省的な性格が老いとともにすすむ)、自分たちの時代が終わっていくことを理解しており、無理に抗ったり政治的行動を起こしたりはしない。サリーナ公はまだ小さい息子たちよりも若くてハンサムで機を見るのに聡い甥タンクレディ(アラン・ドロン)のことを気にかけているようなのだが、タンクレディは貴族の大人しい娘ではなく、勃興しつつあるブルジョワの娘で美しく活力溢れるアンジェリカ(クラウディア・カルディナーレ)と婚約する。 とにかく映像が美しい作品で、どの場面をとっても絵画になりそうだ。多数のエキストラが動員されて

    美しい映画の終わりは…〜『山猫』4K修復版 - Commentarius Saevus
  • 全部夢でできている〜ITCL『テンペスト』 - Commentarius Saevus

    インターナショナル・シアター・カンパニー・ロンドンの『テンペスト』を白百合女子大学で見てきた。ポール・ステッビングズ演出で、毎年日に来ている劇団である。ほとんど大道具もないシンプルな舞台で、非常に少ない人数でとっかえひっかえいろんな役をやるのが特徴の劇団だ。 この上演も役者6人でやるのでゴンザーローの役なんかはカットされ、ゴンザーローの台詞は別の役が言うようになっている。有名なユートピアの台詞は最後にファーディナンドとミランダが出てくるところで若い2人が言うようになっており、この2人が将来良き君主になるのかもしれないということと、それでも若さのせいで少々理想主義的にすぎることを暗示している。こういう変更はわりと良かったと思うのだが、ただ役者の着替えの都合でトリンキュローがいろいろひとり芝居をするところが挿入されているのはちょっといらないのではと思った。とくに傘のスケッチとお酒のスケッチは

    全部夢でできている〜ITCL『テンペスト』 - Commentarius Saevus
  • 画面の全てが女の心を映す〜『キャロル』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    トッド・ヘインズ監督の新作『キャロル』を見てきた。原作はパトリシア・ハイスミスの『キャロル』である。とにかくびっくりするくらいよくできている映画だ。 1952年のニューヨークを舞台に、ふたりの女性の恋を描いた映画である。離婚を控えた美しい中年女性キャロル(ケイト・ブランシェット)がデパートで働く写真家志望の若い娘テレーズ(ルーニー・マーラ)と出会い、恋に落ちる。ところがキャロルの夫であるハージ(カイル・チャンドラー)が独占欲を発揮し、キャロルの性的指向をネタに娘リンディの親権を奪おうとしはじめる。キャロルは窮地に陥り、一度はテレーズと別れようとするが… まず、監督であるトッド・ヘインズのこだわりがすごい。全体的にどの画面も完璧に美しく50年代風で、かつ意味のあるものに見えるよう計算し尽くされており、たいしたことが起こらないような場面でも細部まで緻密なので観客は気が抜けず、はっきり言って見て

    画面の全てが女の心を映す〜『キャロル』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • もし『お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』に続編があったら? - Commentarius Saevus

    この間、ツイッターで「もし2007年に亡くなった若桑みどり先生が生きていたら『お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』の続編があったでしょうねー」という話になった。 お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門 (ちくま新書)posted with amazlet at 15.12.02若桑 みどり 筑摩書房 売り上げランキング: 43,338 Amazon.co.jpで詳細を見る 『お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』(筑摩書房、2003)は、ディズニープリンセスもののアニメを中心に分析したフェミニスト批評の入門書で、映画を扱ったフェミニスト批評としては私が知っている中でも最もとっつきやすく、わかりやすいもののひとつである。『白雪姫』や『シンデレラ』、『眠り姫』などのおなじみのプリンセスストーリーをジェンダーの視点から読み解くことで、こ

    もし『お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』に続編があったら? - Commentarius Saevus
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