スマイリーキクチ『突然、僕は殺人犯にされた』は衝撃的な本である。お笑い芸人として働いていた著者が、突然、ネットで「強姦殺人犯」と決めつけられ、延々と誹謗中傷の被害にあいつづける様が、この本には克明に綴られている。 テレビを初めとするメディアで顔や名前を出している人間ならだれでもかれと同じ被害にあう可能性がある。そういう意味で、戦慄を禁じえない内容であるといえる。この本については、すでに各所でさまざまなひとが意見を述べている。だから、ぼくは同じような内容をくり返すことはやめよう。 ぼくがこの本を読んでつくづく思ったのは、ネットの「匿名性」がいかに人間性を腐らせるかということだ。この本には異常に汚らしい罵言を吐く人々がたくさん出てくるのだが、じっさいに捕まってみると、そのほとんどが「気が弱そうな普通の人」であった。