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ブックマーク / www.newsweekjapan.jp/column (11)

  • 「心債」

    中国のネットに重苦しい雰囲気が広がっている。特に「発言する人たち」は今年国家主席になったばかりの習近平がぶちあげた「チャイナドリーム」とやらがいったいどんなものなのか見定めようとしてきただけに、今はなんともいえない煮えたぎるような怒りに身を任せつつ、それを吹き出させる方向を探しているようにも見える。 7月20日夕刻に北京国際空港第三ターミナルの到着ロビーで起こった手製爆弾事件。ちょうど夏休み、そして週末の夕刻ということで、空港に出迎えにやってきていた人も多かったのではないか。爆弾を作って持ち込んだ男の挙動はそれを引火させる前からそんな人たちの目を捉えており、引火と同時に写真や情報が中国国産マイクロブログ「微博」に飛び交った。 そして、その前に彼が配っていたというビラから、事件発生わずか30分もたたないうちにその身元が山東省に暮らす冀中星だと明らかになった。その速さには驚いたが、首都空港とい

  • ラマダン大河ドラマが巻き起こす波紋

    ラマダン(断月)が始まった。ラマダンとは、日の出から日の入りまでの間、飲を断つイスラーム暦の月で、貧富、貴賤、老若に係わりなく、空腹はすべからく辛いのだと、神の前に人間皆平等という教えを体現した慣習である。今年のラマダン開始は7月20日、暑いのと昼の時間が長いのとで、イスラーム教徒には殊の外、厳しい季節となっている(イスラーム暦は太陰暦なので、一年で10日ずつ早くなるのだ)。 さぞ過酷な一か月かと思いきや、実はラマダンは多くの庶民が楽しみにする、娯楽の月でもある。日中の断なので生活が昼夜逆転し、昼はグダグダ、夜は毎晩宴会続き。夜更かし月間なのが、実情だ。 その娯楽ムードに拍車をかけるのが、毎年ラマダン期間限定で放映されるテレビの大河ドラマだ。どの国、どのチャンネルも、企画制作に投入する資金、人員は、某国日曜の大河ドラマの比ではない。番組ごとの競争も激しく、エンタメ業界先進国として覇を

  • 「解任」と「異動」の間で

    中国鉄道部の王勇平スポークスマンが8月16日、その職を「解任」された。 カッコ付きなのは、新華社の英語配信では同氏が「dismiss」されたとはっきり書かれ、日メディアの多くもそれに応じて「免職」「解任」「更迭」と伝えたが、中国語報道では最初の「停職」「免職」からだんだん「卸任」「離職」「被調離」という表現が増えてきたからだ。これらはそれぞれ「任を終えた」「職を離れた」「異動になった」という意味で、「免職」や「解任」に比べると処分的な意味が薄く、その用語意図は明らかだ。 王氏は7月末の高速鉄道事故直後の記者会見で追突車両の運転台を潰して埋めた理由についてきかれ、「作業用クレーンの足場作り。信じるかどうかはあなたの勝手だが」と突き放し、また捜索活動を半日で打ち切った後に幼女が救出されたことを「奇跡だ」と形容して、大きなブーイングを浴びた。そんな王氏の去就は事故後ほとんど政府からの発表がない

    「解任」と「異動」の間で
    Tiantian
    Tiantian 2012/05/06
    多くの事故や事件で監督不行き届きとされて失脚した官吏たちが、何事もなかったように1年以内に別の地域のニュースに顔を出す......現在の盛光祖鉄道部長(鉄道相)も
  • 「日本よ、がんばれ!」@香港

    香港で入った書店で、「日・再出発」というタイトルのが目に入った。カバーに使われている写真はあの「希望の松」だ。小さな「頑張ろう!日!」と日語で書かれた赤いステッカーが貼り付けられていた。手に取ると、副題に「日で暮らす香港人22人の地震後の想い」とある...ぱらぱらと開いて、ふと思った。ほかの国でもこんなが出ているのだろうか? 我々は日で震災後海外における「風評」ばかりを気にしてきたが、こんなふうに日で暮らす人々が自分の震災経験を自国の人に伝えようとしていることに我々は気づいているだろうか? 「日人はどうしてこんなに前向きになれるんだろうと、なんども考えた。災難に慣れているから? 周囲のことなんて気にしてないから? どちらかというと、わたしはこう感じている。ここが彼らの家だから、ここを離れるなんて考える必要のない問題だから。SARSの(感染地域に指定された)期間中、わたしも

    「日本よ、がんばれ!」@香港
  • 投票という「権力」:台湾総統選後感

    「どっちが勝ってもたいした違いはないよ。でもね、ぼくは馬英九に入れる。だって蔡英文が勝てば、中国との間がごたごたして台湾の経済が悪くなるかもしれないし、そうなったら不動産価値が下がるだろ。それは避けたいんだ、ただそれだけ。でも、当のところ、どっちが勝っても違いは当にないんだよ」 台湾総統選前夜、香港で会った台湾人の友人はこう言った。彼は投票するようになって以来、ずっと国民党候補に投票してきたそうだ。それほどまでにこだわりのある彼があっさりと、今回の選挙を「どちらが勝っても違いはない」と何度も言ったことに驚いた。 結果はもうすでに皆さんがご存じのとおりである。国民党の馬英九総統が民進党代表の蔡英文候補に80万票の大差をつけて続投を決めた。選挙前には、現地メディアが「接戦になる」と伝え続けていたせいかもしれないが、外国メディアの多くが「蔡総統」の実現を心のどこかで期待していた印象を受けた。

    投票という「権力」:台湾総統選後感
  • 香港、「白手興家」時代の終えん

    「なんでまたこんなことになってしまったんだろう...?」。きっと今、ドナルド・ツァン(曾蔭権)香港特別行政長官はそう思い続けているはずだ。 2005年に香港特別行政区の初代行政長官だった董建華氏が「健康不安」を理由に任期途中で辞職した後、行政長官が外遊や休暇などで香港不在時にその代理を務める政務長官の職にあったツァン氏が二代目行政長官に格上げされた。しかし、香港の憲法ともいえる「香港基法」はこの時、「行政長官の任期中の辞職」を想定した後任人事について規定がなかったため、代理行政長官を格上げして董氏の任期終了(~07年5月)まで代行させるべきか、いやそれでは「民意」を得ていないからやはり正式な二代目行政長官の選挙を前倒しで行うべきだ、と、香港政府及び中央政府でさまざまな議論が噴出した。 とはいえ、その時「民意だって? おこがましいやつらだ」と市民は考えていた。というのも行政長官は香港市民の

    香港、「白手興家」時代の終えん
    Tiantian
    Tiantian 2012/05/06
    その結果、香港で最も力を持っていた不動産業界、金融界などの政治に対する発言力が植民地時代に比べて飛躍的に増大し、政策に大きな影響を与えるようになり
  • バハレーン紀行(3):「F1が大事か、国民が大事か!」

    のんびり紀行文を書き続けていたら、とうとうそのバハレーンで、衝突に火がついてしまった。ここ数日、バハレーンでのF1グランプリの開催に反対するデモが大規模に組織され、バハレーン官憲と激しくぶつかり合ったからだ。20日、F1開催日に行われた最大級のデモでは、反政府活動のリーダーのひとりが殺害されたことが発覚した。 なぜF1に反対するのか? 別に、カーレースがいけないのではない。それどころじゃないだろう、もっと先に国内で政治改革すべきことがあるはずじゃないか、というのがその趣旨だ。実は昨年の三月、予定されていたF1グランプリが「アラブの春」で延期された。バハレーン政府にしてみれば、今年も開催できないなんて沽券に係わる、と考えたのだろうし、反政府側は、昨年開催を見送ったときと比べて改革されたどころか、もっと状況が悪くなっているじゃないか、という思いだろう。 三月にバハレーンを訪れたとき、印象的だっ

    Tiantian
    Tiantian 2012/05/03
    湾岸首長国の国王、首長のイメージは、なんといってもディスダーシャ(ガラビーヤともいう)と呼ばれる白の長衣に、部族のアイデンティティを表したクフィーヤと呼ばれる頭巾をかぶっている姿だろう。
  • イラク:イカレたクールな若者の災難

    「イラクでエモ青年殺害される」。 こんな記事が英BBCで3月14日に報道された。 まず中東情勢をフォローしている人たちは「エモってなんだろう」、と思っただろう。そして、ロック好きの人なら、「なんでイラクにエモが?」と思ったに違いない。 「エモ」とは、一般的には80年代後半以降のハードコア・パンクの流れのひとつのことである。ギンギンのドライブ感なのにメロディは妙に歌い上げ型で情緒的、歌詞は内省的といった特徴を持つので、なんとなく女々しいとか、文学的で暗いイメージが付きまとう。 それがイラクに居るとは、どういうことか。いや、別にそうしたジャンルの音楽が流行っているわけではなくて、「エモ」的ファッション(つまり、黒で身を包み髑髏マーク入りのTシャツにタイトなジーンズ、髪は長くてツンツンさせる)が若者に流行り、それがイスラーム政党率いる「お上」の不快を買っている、ということになのである。なんにせよ

    イラク:イカレたクールな若者の災難
  • エジプト:サラフィー主義者がやってきた!

    1月21日に発表されたエジプトの人民議会選挙結果で、ムスリム同胞団の政治組織である「自由公正党」が多くの議席を確保するだろうことは、大方予想されていたことだが、第二党に保守派のサラフィー主義者たちが来るとは思わなかった――。たいていのメディアや評論家、研究者はそう思ったに違いない。サラフィー主義とは、現状を改革するうえでその模範を初期イスラームに求める、すなわちサラフに回帰しようという考え方だ。単に過去のイスラームに戻れという考えもあれば、近代化を取り入れ硬直化したイスラームの伝統から脱却してこそ、純粋なイスラームに戻ることができる、という考えもある。 最近は、イラク戦後のイラクで盛んに反米活動を行った勢力にサラフィー主義者がいた、と報じられることが多かったので、サラフィー主義者=反米テロリスト、というイメージが流布している。観察しているわれわれ以上に、世俗主義でリベラルなエジプトの知識人

    エジプト:サラフィー主義者がやってきた!
  • 主役を食った助演男優〜重慶市の巻

    「事実は小説よりも奇なり」なんて言葉がありますが、まー中国ほどウソみたいな当の話が転がっているところはないのではないか。ちなみに中国ではこの言葉の中国語バージョンを聞いたことがない(バイロンの詩が原典だから翻訳語はあると思う)。たぶんそんな言葉を使う必要がないくらい、中国社会には小説みたいな実話がごろごろあるということなんだろう。 まぁ、そんな中国で起こった話で日人をびっくりさせるのが我々の仕事(?)なわけですが、さすがに重慶市の元公安局長がアメリカ領事館に飛び込み、政治庇護を求めたというニュースにはこっちが心底驚いた。「面白さ」ではここ10年来最高の出来である。 このNWJサイトではまだ取り上げられてないようなので簡単に背景を説明すると、領事館に逃げ込んだのは王立軍元重慶市公安局長。薄煕来同市党書記(党書記は市長よりも上の地位で、文字通り市のトップである)が以前省長を務めた遼寧省から

    主役を食った助演男優〜重慶市の巻
    Tiantian
    Tiantian 2012/02/22
    薄煕来, 王立軍, 薄瓜瓜
  • イラン女子サッカーチームを取り巻く不幸

    暗いニュースが続くなかで、「なでしこ」の優勝は大きな歓喜だった。深刻な災厄を被った経験は、むしろその障害を乗り越えようと、予想以上の力をもたらすのかもしれない。 「なでしこ」の快挙の一方で、別の種類の困難に泣かされているチームがある。以前にこのブログでも紹介した、イランの女子サッカーチームだ。6月6日、FIFAは、イラン女子チームが頭から首まで覆うヒジャーブ(スカーフ)をつけて試合に臨むのは規定違反だ」として、イランのロンドンオリンピック出場権を剥奪した。宗教や政治的シンボルを身に着けてはいけない、というFIFA規定にひっかかったからというのだが、ヒジャーブがダメというのは実質的にイスラーム教徒の女性に「スポーツするな」というようなものではないか、と反発も高まっている。 ヨルダンでもこの決定は波紋を呼んでおり、FIFA副会長となったヨルダン王家のアリー王子が頭を抱えている。チームの中心的プ

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