昨年5月27日のニューヨーク・タイムズにジュリエッタ・グィッチャルディという女性にまつわる記事が掲載された。ジュリエッタはベートーヴェンがピアノソナタ第14番嬰ハ短調を捧げた女性だった。ピアノソナタ14番は通称「月光ソナタ」と呼ばれている。 第一楽章の出だしは特に有名で、誰でも一度は聞いたことがあるはずだ。その有名なソナタとこの18世紀に生きた女性の記事は興味深く、もっと知りたいと思った。そこでネット上で手に入る文献や関連図書を参照しつつ調べてみた。ふたりの関係を知ることができる断片的な事実や事柄は点在していたが、今回はそれを調べひとつの流れとして見ていこうとする試みだ。 僕自身、舞台となるウィーンを訪ねたことがありベートーヴェンの部屋やピアノも実際にみたことがある。しかし、その時点ではジュリエッタのことは知らなかったので、彼女の足跡は何も辿らなかった。この原稿で彼女とベートーヴェンの姿を
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