私たちはこれまで、「死へと関わる存在」の日常的なあり方について見てきた。今や、ここから遡って死の実存論的概念を完成させることによって、「死へと関わる本来的な存在」の方へと進んでゆくための準備を完了させる時である。 これまでの分析において、死の可能性はすでに、「①最も固有な②関連を欠いた③追い越すことのできない可能性」として露呈されていた(この点については、12月2日付の記事を参照されたい)。日常性における人間存在のあり方を振り返りつつ、ここに次の二つの規定が付け加えられることによって、この可能性の画定がようやく完了し、私たちの目の前には、「死の実存論的概念」の完全な形が浮かび上がってくることになる。 ④ 死の可能性とは、「確実な可能性」である。〈ひと〉はたとえば、「人間、誰もがいつかは死ぬものだ」と折に触れて口にしており、この意味では日常性なるものも確かに、死の確実性を承認しているようには