中国と東南アジア諸国が争う南シナ海の領有権問題は、外交の舞台ではいくつかの新たな動きがみられる。そこでの駆け引きと、秘められた思惑とは-。(シンガポール 青木伸行) ◇ 「U字形ライン」「牛の舌」-。主権が及ぶと中国が主張する南シナ海の海域は、その形状などからこう呼ばれる。 中国が領有権を主張する根拠としているのは、「古代から南シナ海の諸島は中国領」という“歴史認識”である。例えば、南沙諸島は約2千年前の漢朝の時代に中国が最初に発見した、というものだ。 だが、肝心の国際法上の根拠は明確な説明を欠いている。U字形ラインは、国連海洋法条約が認める領海や、排他的経済水域(EEZ)でもない。このため、フィリピンなど東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国は、中国の主張は国際法上の根拠がなく、一方的で強引な主張だ、と非難し続けている。 7月下旬、インドネシアのバリ島で