たったひとりですべての役割をこなしてしまう”ワンマン・バンド”と聞いて、映画『メリー・ポピンズ』(1964年)でディック・ヴァン・ダイクが演じた踊り跳ねる煙突掃除屋をイメージするのはいささか的外れかもしれない。ここでは、たとえばスティーヴィー・ワンダーのような、才能あるマルチプレイヤーを思い出していただきたいと思う。彼はキーボードやハーモニカなどどんな楽器も巧みに操ることのできる最も優れたワンマン・バンドのひとりであるばかりか、音楽の世界における最もクールで、最も才能に恵まれた人物のひとりでもある。 トップで活躍するミュージシャンたちの中には、多彩な楽器を労もなく演奏できる人が本当に数多くいる。カーティス・メイフィールド、PJハーヴェイ、デイヴ・グロール、レディオヘッドのジョニー・グリーンウッド、ラッシュのゲディー・リー、アリシア・キーズ、ロイ・ウッド、ザ・ローリング・ストーンズのブライア
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