スコラ哲学と普遍論争 『キリスト教の歴史』小田垣雅也著 講談社学術文庫 2 中世初期の経過 (第3章 中世初期) 中世とは、キリスト教史的に言えばギリシア・ローマ的キリスト教からローマ・ゲルマン的キリスト教に移ったということである。思想史的には教父神学からスコラ神学への移行である。また教会史的に言えば、厳密な意味での教皇権が確立されたということである。教皇グレゴリウス1世は教皇(Papa)という称号をローマの司教にのみ限り、教皇のみがペトロに由来する使徒的伝承を保持するとした。そしてこの権威は他の司教たちのみならず、帝権にも優越する。ユスティニアヌス大帝の「皇帝教皇主義」に対立した「教皇皇帝主義」である。このような主張がなされ得る背後には、修道院の発展という事情もあった。修道院の起源は四世紀のエジプトであるが、西方ではベネディクトゥス(480頃-543頃)が始めた修道院が有名で、要す
担当:棟居 洋 第9章 中世キリスト教世界とイスラム世界(1) b-2 修道院(つづき) 12世紀における商業ルネサンスと都市の勃興は、信仰生活の上にも深刻な影響を与えました。遠隔地貿易に乗り出した上層市民は、俗語の読み書きを習得し、ある程度ラテン語の知識を持つようになりました。すなわち彼らはミサで読みあげられる聖書を理解し、自らその意味を考えるようになったのです。しかも彼らは、土地に結びついた安定した生活を送っていたのでなく、政治や経済のその都度の状況に左右される不安定な生活の中で魂の不安と動揺に晒されていましたから、激しい救いへの希求を抱いていました。このような上層市民や都市貴族は、神学者のように伝統的な教父の解釈によって聖書を解釈する能力を持っていませんでしたので、ただ聖書を素朴に理解しました。この単純な聖書理解から使徒的生活(vita apostolica)・使徒的清貧(paup
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