犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。 近代刑法は、啓蒙思想に端を発している。本来、人間の罪と罰に関する問題は哲学的な深さを持っているはずであるが、近代刑法の理論はその深さを直視していない。罪刑法定主義のイデオロギーは、罪を犯した人間に実存的な反省を促すことを否定的に捉えている。近代刑法の罪刑法定主義は、あくまでも公権力による恣意的な刑罰の濫用を最大の悪として排除し、人間の罪と罰に関する哲学的な問題は後回しにしている。 近代刑法は、その思想的源流をロックやルソーの社会契約論に求めているが、これが1つの転換点である。近代刑法の源流は、ホッブズ(Thomas Hobbes、1588-1679)の社会契約論ではない。ロックはホッブズの理論を批判的に継承したが、その決定的な違いは、ホッブズが自然状態において自然法が不