→紀伊國屋書店で購入 「公とは何か」 公的なものと私的なものの境界が時代とともに変動していることは、アレントの『人間の条件』などでも指摘されてきたが、この書物はギリシア、ローマ、中世、現代における公的なものと私的なものの領域を、具体例で考えようとするところがユニークだ。 古代のギリシアではアゴラで食事をすることも下品なこととされていた。物を食べるのは、家という私的な空間でおこなうべきだとされていたのだ。ところがキュニコス派のディオゲネスは、アゴラでオナニーをしてみせる。クラテス夫妻はアゴラでセックスをしてみせる。もちろんコートで覆っていただろうが、身体の動きだけでそれは分かるものであり、これが挑発的で、公的な領域を侵犯する行為と理解されたのは間違いのないところである。 オリゲネスはオナニーを哲学的な営みとして実行したのであり、他者にたいする配慮の欠如こそ、自立した人間の印だと考えたのである