上野 修 著(NHK出版) このNHK出版の「シリーズ・哲学のエッセンス」もすでに20冊を超えた。約100頁というコンパクトな分量の中で、それぞれの著者が、たんなる解説や概論では終わらない個性に富んだ問題意識を提示し展開しているこのシリーズは、岩波書店の「思考のフロンティア」シリーズとともに、現在もっとも触発的な議論に会える場の一つといってよいだろう。そのシリーズの最新刊が上野修による『スピノザ』(B6版・107頁・1000円・NHK出版)である。 一読して感じられたのは、本書における上野のスピノザへのアプローチのユニークさである。それはこのシリーズの中でも抜きん出ているように思われる。上野は本書でスピノザの『神学・政治論』だけを扱っている。本書とは別に『スピノザの世界―神あるいは自然』(講談社現代新書)を最近公刊しているとはいえ、本書にはスピノザの主著である『エチカ』をめぐる議論はまった