「違憲じゃないという著名な憲法学者もいっぱいいる。」――内閣官房長官、菅義偉の発言には驚いた。半世紀以上もたって亡霊が出たのかとさえ思った。 衆院の憲法審査会で集団的自衛権の行使を可能にする新たな安保法制案を憲法学者3人がそろって「違憲」と断じたことに対して、菅は記者会見でこう述べたのである。 菅が懸命に支える内閣総理大臣、安倍晋三の敬愛する祖父、岸信介が1960年、日米安保条約改定をめぐる混乱の中で発した有名なセリフを思い起こした人も多かろう。 「後楽園は(プロ野球見物者で)満員だ。私には『声なき声』が聞こえる。」 国会議事堂や首相官邸を数十万のデモ隊に囲まれながら、岸は国会に警官隊を導入し新条約の承認を強行採決した。自分に都合のよい言葉だけを聞いた岸を真似するような菅の発言は、法案審議の今後を示唆しているようで背筋が凍る思いだった。具体的な名前を問われて出したのは、学者としてはあまり評