「戦争は、人びとがほかの人びとを殺すときに始まるのではない。報復として自分が殺されるリスクを冒す時点で始まるのだ」 *1 では、ラスベガス近郊にいながら遠隔操作でアフガン上空を小型飛行機で索敵する兵士は、はたして戦争に参加しているのだろうか? ロボットが人間の兵士の役割を代替することで、今、戦場は劇的に変わろうとしている。そして戦争の変容は、社会の変容をもたらす。本書は、他にはないスリリングな切り口で戦争を論じた、最高に面白い一冊だ。 たとえば、カントは民主制は戦争を抑制すると論じたが、その根拠は「ふつうの市民なら自分が死ぬのが怖くて戦場になんか行きたくない」というものだった。しかし、朝に子どもを保育園に送り、昼は軍の施設で遠い戦場のロボットを遠隔操縦し、夜はまた家に帰ってきてアメフトの試合を家族と観る、そんな兵士が多くなってきている。兵士が死ぬリスクが減っていけば、たとえ民主制といえでも
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