「NP-WU10」という製品の釜は、熱が全体に均一に伝わるように鋳物工場で手作りされている。ふたはプラチナを配合した材料でコーティングされており、アミノ酸のレベルが完璧な水準になるようにしてある。また、この製品はデジタルセンサーも装備しており、完璧な炊きあがりになるまで121通りの微調整が可能だ。 つやつやしたジャポニカ米を食べたり宗教的行事の捧げ物にしたりしているうえに、コメの生産が政治的な聖域にもなっている。 そのようにコメを崇拝する国にとって、1500ドルもする象印マホービン製の炊飯器は最も重要な祭壇である。いや、少なくともそうであるはずだ。 だが、大阪に本社を構え、この炊飯器NP-WU10の開発にエンジニアやデザイナー、試食担当者を何年も取り組ませてきた象印は、大きな問題に直面している。日本のコメの消費量が減っているのだ。それも大幅に――。 高齢化し縮む胃袋、食生活の変化で日本酒や