東北地方太平洋沖地震によって発生した津波は、福島県、宮城県、岩手県、青森県など太平洋沿岸の多くの地域を襲い、4県合わせた被災面積は約400km2に達しました。地表面に存在したほぼ全ての構造物を押し流し、その結果として、想像を超える瓦礫の山が形成されました。この津波被害で特徴的な点は、漁港周辺において、多数の海産物の冷凍貯蔵施設が破壊され、推定数千トンの魚介類が津波によって内陸地域に押し流され、また、相当量の魚介類が冷凍庫内で腐敗したことです。これら腐敗した魚介類を好んで餌とするハエ類が大発生し、5月中旬から大きな問題となりつつあります。このような自然災害において、初夏から晩秋にかけて、衛生昆虫類がどのように発生し、実際、感染症の発生に関わる可能性があるのかを以下に概説します。 ハエ類には、瓦礫の中の生ゴミ、津波で広範に押し流された魚介類、有機物の多いヘドロ、打ち上げられた海藻、動物の排泄物