フランス映画もそうだが、戦後のイタリア映画には明らかに二つの方向があった。つまり、ロッセリーニらのネオリアレズモを引き継ぐ作家の映画と、物語の楽しみを基本においた娯楽映画と。ところが、これまたフランスでもそうだが、最近はその中間の映画が増えた。 フェルザン・オズペテクやパオロ・ヴィルズィらがその中間の流れを代表する監督だろう。コメディの名手、ヴィルズィの新作『人間の値打ち』は、不動産業で苦しみながら金融投資で一獲千金を狙うディーノとそれを利用する裕福な金融コンサルタントのジョヴァンニを中心に、2つの家族を描く。 うまいのは、ある夜の事件を3章に分けて、ディーノ、ジョヴァンニの妻のカルラ、ディーノの娘のセレーナの3人の視点から語っていることだ。ガス・ヴァン・サントの『エレファント』の手法で、『桐島、部活やめるってよ』などでも使われているが、視点によって新しい事実が次々に出てくる過程がスリリン