――どこまでも美しい灰色の空―― 『雪の轍』レビュー トルコ共和国アナトリア高原には、奇岩が密集した世にも不思議な景観が広がる一帯がある。世界遺産として名高い、“カッパドキアの岩窟”である。 火山地帯に由来するカルストの大地は何処まで行っても泥に塗れ、低く垂れ込めた雲のせいで何時も灰色の空が広がる。 冬が迫るカッパドキアにあるホテル“オセロ”――騒々しくも静謐で、愚かしくも美しい物語は、ここから幕を開ける。 『雪の轍』Story: 世界遺産のトルコ・カッパドキアに佇むホテル。親から膨大な資産を受け継ぎ、ホテルのオーナーとして何不自由なく暮らす元舞台俳優のアイドゥン。しかし、若く美しい妻ニハルとの関係はうまくいかず、一緒に住む妹ネジラともぎくしゃくしている。さらに家を貸していた一家からは、思わぬ恨みを買ってしまう。やがて季節は冬になり、閉ざされた彼らの心は凍てつき、ささくれだっていく。窓の外