田中優子の「春画のからくり」(ちくま文庫)が面白い。江戸文化が専攻の田中はこんな過激な発言をしている。 「平等」とか「平和」というのなら、女性ヌードを取り締まって、性交写真を自由化すべきなのだ。 浮世絵の天才は北斎が最高なのだが、春画に限って言えば春信と歌麿が優れているのだと言う。むしろ北斎の春画は低い評価がされている。私の好きな英泉などはケチョンケチョンだ。曰く「着物の文様の組み合わせがおかしい、季節感がめちゃくちゃだ。」「ちらりと覗く娘の局部にしても、丹念に描く意志が全くないようで、ここまでいい加減に描かれると、欲情を抱く者は皆無だと言っていい。」 歌麿はほとんど絶賛されている。「歌麿こそ、この『隠す・見せる』手法を意識的に駆使し、かつその頂点に達した絵師である。」 しかし次の図30(下の図版)は(図28や図29=性欲だけのつながりーとは)違う。茶屋の二階でのこの逢瀬は、ゆきずりどころ