福岡県北九州市若松区の歴史について、地元のかたに聞いていると、いままでわたしの知らなかったことがたくさんでてきます。今回ご紹介する『若松市営 電気軌道』もそのひとつです。 石炭の需要がなくなった2021年現在では、若松地域の繁栄は面影をのこすのみとなっています。しかし石炭エネルギーの需要があった時代、若松地区は石炭の集積港としてたいへん栄えました。 筑豊炭田から産出された石炭は、鉄道で若松駅にまで輸送され、若松港から大型船で福岡、大阪、中国・四国地方へ運ばれました。 この石炭輸送をおもに支えたのが鉄道です。石炭がたくさん使われていた時代には、まだトラックは主な輸送手段とはなっていなかったようです。筑豊炭田で石炭がほりだされはじめたのは1700年初頭、つまり、江戸時代の元禄末期です。 この時代の石炭輸送はおもに船で、その後、1891年(明治24年)若松-直方間の路線開通をはじまりとして、鉄道