僕には2つ下の幼馴染がいた。 勉強もスポーツもでき、その上、気立てが良かったので、たくさんの人達から愛されていた。 彼女が微笑むと、まるで爽やかな風が通り抜けたかのように、周囲は一瞬でやわらかな雰囲気に包まれたものだ。 そんな彼女にも、一つだけ足りないものがあった。 生まれつき聴力がなかったのだ。 小学生の頃、隣に住む彼女の母親から「何かあったら助けてやってね」とお願いされていたこともあって、僕はいつも彼女の傍にいた。 中学生になると、近所の子どもだけが通う小学校とは違い、色んな地区から生徒が学校に集うようになる。 中には物珍しいのか、彼女をからかう奴もいた。 あの屈託のない笑顔しか見せたことのない彼女が、大きな目からポロポロと涙をこぼしているのを初めて見た時、頭に血がのぼって、いじめた奴らをこてんぱんにしてやった。 その日から、頼まれたからではなく、何があっても自分が彼女を守っていくんだ