タグ

ブックマーク / realsound.jp (53)

  • 菅田将暉が演じた主人公は山崎貴の“自画像”だ 『アルキメデスの大戦』が描く倒錯した唯美史観

    山崎貴という作り手を、後世の人はいったいどのように評することになるのだろうか? 彼は今や日を代表するヒットメイカーとなり、多くの有名俳優たちが起用してくれと直談判するほどのセレブリティだ。しかし、何か様子がおかしい。この奇妙な感覚は気のせいかもしれないが、山崎の師匠筋にあたる伊丹十三が映画監督として全盛期を迎えた1980年代後半から1990年代前半にも身に覚えのある感覚である。伊丹十三の活躍には常に得体の知れない空虚が付きまとっていた。一方、山崎のキャリアについて言えば、2000年の監督デビュー作『ジュブナイル』の頃がじつは最も無邪気に「意外といい映画だよ」という評言が飛び交っていたように思える。その後の作品のうち、『ALWAYS 三丁目の夕日』3部作(2005~12)、そして『永遠の0』(2013)で、山崎貴の運命は大きく変わった。何がどう変わったのか? 日でもうひとり、VFX分野で

    菅田将暉が演じた主人公は山崎貴の“自画像”だ 『アルキメデスの大戦』が描く倒錯した唯美史観
  • 菅田将暉が演じた主人公は山崎貴の“自画像”だ 『アルキメデスの大戦』が描く倒錯した唯美史観

    山崎貴という作り手を、後世の人はいったいどのように評することになるのだろうか? 彼は今や日を代表するヒットメイカーとなり、多くの有名俳優たちが起用してくれと直談判するほどのセレブリティだ。しかし、何か様子がおかしい。この奇妙な感覚は気のせいかもしれないが、山崎の師匠筋にあたる伊丹十三が映画監督として全盛期を迎えた1980年代後半から1990年代前半にも身に覚えのある感覚である。伊丹十三の活躍には常に得体の知れない空虚が付きまとっていた。一方、山崎のキャリアについて言えば、2000年の監督デビュー作『ジュブナイル』の頃がじつは最も無邪気に「意外といい映画だよ」という評言が飛び交っていたように思える。その後の作品のうち、『ALWAYS 三丁目の夕日』3部作(2005~12)、そして『永遠の0』(2013)で、山崎貴の運命は大きく変わった。何がどう変わったのか? 日でもうひとり、VFX分野で

    菅田将暉が演じた主人公は山崎貴の“自画像”だ 『アルキメデスの大戦』が描く倒錯した唯美史観
  • 『トイ・ストーリー4』なぜファンが戸惑う内容になったのか? 作り手のメッセージから読み解く

    『トイ・ストーリー』第1作(1995年)は、ピクサー・アニメーション・スタジオの最初の長編作品であると同時に、世界初の長編フルCGアニメーション作品でもある。CGによる表現がアニメーションの主流になりつつあるいま、世界初の長編アニメーションである、ディズニークラシック『白雪姫』(1937年)と同様に、それはアニメーションの変革を象徴する重要な作品となったといえるだろう。 CGという発達段階の表現手法がとられていることから、新作が作られるたびに飛躍的な進歩を遂げてきた、このシリーズ。全体的にバランスが安定し、作品として円熟の域に達した『トイ・ストーリー3』では、アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞するなど、大きな評価を受けた。なかでもその結末は、シリーズを締めくくる“完璧な”ラストだと賞賛されることが多い。 だが、ここで紹介するシリーズ第4作『トイ・ストーリー4』は、そんなファンや多くの観

    『トイ・ストーリー4』なぜファンが戸惑う内容になったのか? 作り手のメッセージから読み解く
  • 絶好調続く『天気の子』 もはや避けることができない宮崎駿との比較

    天気の子』が公開2週目に入っても絶好調を維持している。先週末の土日2日間の動員は70万4000人、興収は10億1200万円。公開からわずか10日間、7月28日(日)時点で累計動員287万人、累計興収39億円を突破している。前週の当コラム(『天気の子』大ヒットスタート 万人向けだった『君の名は。』とは違う、その魅力とは?)では作品を高く評価しながらも興行面においては少々慎重な見解を述べたが、新海誠監督は今作でほぼ間違いなく、『君の名は。』から2作連続で100億円突破するという偉業を成し遂げることになるだろう。 同じ日人監督による日国内での2作連続興収100億円突破がどれだけすごいことかというと、実写映画監督を含めても前例は宮崎駿監督ただ一人だけ(『踊る大捜査線』シリーズで広克行監督も興収100億円突破を2回しているが、監督作としては連続していない)。宮崎駿監督が2作連続で興収100億

    絶好調続く『天気の子』 もはや避けることができない宮崎駿との比較
  • 松田龍平 × 山下敦弘『ぼくのおじさん』対談 山下「自分で言うのも何ですが、このタッグは面白い」

    松田龍平と山下敦弘監督が初タッグを組んだ映画『ぼくのおじさん』が、公開された。北杜夫の同名小説を原作とする作は、松田扮する偏屈で変わり者な「おじさん」と、大西利空扮する甥っ子・春山雪男の凸凹コンビが騒動を巻き起こす“バディ”ムービーだ。ほのぼのとした日での日常を描いたシーンから、「おじさん」が一目惚れをしたエリー(真木よう子)を追いかけてハワイに飛び立つ“ラブストーリー”まで、山下監督ならではの演出が刻まれた作品となっている。リアルサウンド映画部では、主演の松田龍平と山下敦弘監督にインタビュー。お互いの印象や、奇跡が起きたラストシーンの撮影エピソード、そして「おじさん」の魅力について語ってもらった。 山下「龍平君とできると決まってドキドキしてました」 −−今回、タッグを組むことになった経緯は? 山下敦弘(以下、山下):企画を立ち上げた須藤泰司プロデューサーが、この原作を映画化したいって

    松田龍平 × 山下敦弘『ぼくのおじさん』対談 山下「自分で言うのも何ですが、このタッグは面白い」
  • 菊地成孔の『ぼくのおじさん』評:出演者全員が新境地を見せる、のほほんとした反骨映画

    「作家」と「職人」(今は誰だ?定義は?) この、恐らく邦画界では60年代あたりに一般化し、その後の紆余曲折を経て、一度は廃れ切ってしまったものの、また再び、ここ数十年ほどで、気がつけば驚くほどの活況を呈している邦画界の中で、ルネサンスしても良さそうな、しないほうが良さそうな、ある区分の問題系に於いて、山下敦弘ほど突きつけてくる監督はいない。作は、山下敦弘の最新作である。 山下敦弘は作家か? 職人か? 最も元も子もない回答は「作家であり、職人である」あるいは「職人的な作家」であろう。 この回答は、山下敦弘個人に対して最も元も子もない上に、一般論としてかなり脆弱である。「そんなこと言ったら、今、誰だってそうだよ。岩井俊二のデビューからシネコンの定着までにデビューした映画監督は全員<作家であり、職人>でしょう。でないと、アカデミー賞外国語映画賞の日からの15目の監督が滝田洋二郎である説明が

    菊地成孔の『ぼくのおじさん』評:出演者全員が新境地を見せる、のほほんとした反骨映画
  • 荻野洋一の『続・深夜食堂』評:あまりにもさりげなく提示される食、生、そして死

    まずは東京・中央区の築地という土地を歩いてみよう。江東区の豊洲新市場における「盛り土」問題、汚染物質検出によって、あいまいなうちに築地市場が延命中である。設備の近代化や広さの問題はともかくとして、日最高級の繁華街・銀座の奥座敷にある築地は、東京の台所としては絶好のロケーションであり、その点で豊洲はもともと敵うはずもない。興味深いのは、新大橋通りをはさみ、築地市場と国立がんセンターが相対していることである。都民の胃袋と死の病が、くしくも道をはさんで相対しているわけである。欲という生の欲望と死は隣り合わせであるし、それは悲劇でもなんでもない。われわれ自身の運命を具現化したような風景だ。 、生、そして死。それらがことのほか隣人同士であることを、あまりにもさりげなく提示して悪戯笑いを浮かべている映画がある。『続・深夜堂』である。「ビッグコミックオリジナル」連載漫画原作のテレビドラマが昨年、

    荻野洋一の『続・深夜食堂』評:あまりにもさりげなく提示される食、生、そして死
  • 『リング』『呪怨』では描けなかった領域へーー『貞子vs伽椰子』を成功させた白石晃士監督の手腕

    「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」 ビデオを見た者を呪い殺す貞子。家に入った者を呪い殺す伽椰子。「Jホラー」を代表するヒットシリーズ『リング』と『呪怨』の、ハリウッド進出も果たした二大バケモノが出会い、壮絶なバトルを繰り広げる異色作が『貞子vs伽椰子』だ。彼女たちは一体、何を使って戦うのか。未見の観客のために、ここでバトルの様子を詳しく述べることは避けるが、両者一進一退、攻防が目まぐるしく入れ替わる、手に汗握るアツい展開が用意されている作は一見の価値があるだろう。 人気キャラクター同士が作品の垣根、ビジネス上の権利の垣根を越えて対決する映画は、洋の東西を問わずいろいろと存在するが、ひとつの作品としては、統一感が崩れ陳腐化することも多く、題材として非常に難しい企画だといえるだろう。「バカバカしいから興味がない」と考える観客も多いはずだ。そもそも、このような対決企画が生まれるのは、アイ

    『リング』『呪怨』では描けなかった領域へーー『貞子vs伽椰子』を成功させた白石晃士監督の手腕
  • 黒沢清×タハール・ラヒム『ダゲレオタイプの女』対談 黒沢「ホラー映画ではなくラブストーリー」

    黒沢清が初の海外(フランス、ベルギー、日の合作)によって、フランスのパリ郊外を舞台に撮った新作『ダゲレオタイプの女』。国際的に評価されている日映画作家の海外製作作品というと、例えば70年代の黒澤明監督による『デルス・ウザーラ』や80年代の大島渚監督による『マックス、モン・アムール』といった、映画作家としてキャリアの終盤に足を踏み入れてからの覚悟を決めた「挑戦」や「実験」が頭をよぎる。しかし、作『ダゲレオタイプの女』の魅力は、黒沢清作品に魅入られた海外の役者陣や製作陣が、監督のもとに自然と集まり、そこで「いつもの黒沢清作品」を平熱で撮ってみせたような、ある種の軽やかさにある。 主演のタハール・ラヒムは、世界中の先鋭的な映画作家から引っぱりだことなっている人気アクター。ただ、アラブ系フランス人である彼の元にくるオファーの多くは、その民族的背景にまつわる役がほとんどなのだという。そん

    黒沢清×タハール・ラヒム『ダゲレオタイプの女』対談 黒沢「ホラー映画ではなくラブストーリー」
  • 宇多田ヒカル『Fantôme』、国内外で大反響ーーグローバルな音楽シーンとの“同時代性”を読む

    発売日翌日9月29日のiTunesアルバム総合ランキングでは全米3位を記録。ヨーロッパではフィンランドで1位となり、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、スウェーデンなどでTOP20以内にランクイン。アジア各国においても、香港、台湾、シンガポールで1位となり、その他の国でも軒並み上位を記録し、全世界のiTunesアルバム総合ランキングでも6位を記録した。 これらの結果に対して、宇多田ヒカル人も「なにこれどういうこと?笑」「ええええ?!」とツイート。スタッフも「マーケ担当者として正直に告白しますが、ここまでの筋書きはなかったです」とツイートしている。 果たして何が起こっているのか。約8年半ぶりの新作は、なぜ日だけでなく海外でもヒットしているのか。 人やスタッフが率直な驚きを表明していることからもわかるように、海外に向けての大掛かりな展開や仕掛けのようなものは、ほとんど無かったはず。む

    宇多田ヒカル『Fantôme』、国内外で大反響ーーグローバルな音楽シーンとの“同時代性”を読む
  • 宮台真司の『シン・ゴジラ』評:同映画に勇気づけられる左右の愚昧さと、「破壊の享楽」の不完全性

    「行政官僚制の日常」と「破壊の享楽」 『シン・ゴジラ』(7月29日公開/庵野秀明監督)は想像外に興味深い映画でした。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012年)以降の庵野秀明監督の不発ぶりに加え、特撮監督が『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(2015年)で味噌をつけた樋口真嗣氏なのもあって、期待水準を高く設定していなかったこともあるかもしれませんが、間違いなくエキサイティングでした。 作は従来のシリーズと違って、ゴジラに主題的な重心がなく、かと言ってヒーローに焦点が当たる訳でもない。敢えて言えば「日の行政官僚制」が主人公で、そのパフォーマンスに焦点が当たります。その話は後で題にするとして、僕がこの作品を見る前に、どこに注目しようと思っていたのかについて話しましょう。キーワードは「破壊の享楽」になります。 この夏休み、僕の3人の子供たちは、AppleTVで利用できる定額制

    宮台真司の『シン・ゴジラ』評:同映画に勇気づけられる左右の愚昧さと、「破壊の享楽」の不完全性
  • 田中宗一郎が語る、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』とアメコミ映画の現在

    映画の優れた書き手/語り手は映画の世界の外部にもいる。いや、むしろ外部にこそ刺激的で新鮮な視点を提示してくれる論客がいるのではないだろうか? それが『リアルサウンド映画部』を発足させる上での大きなテーマの一つだった。元『SNOOZER』編集長にして、現在も『the sign magazine』クリエイティブ・ディレクターとしての活動をはじめとして音楽シーンに根強い影響力を持つ田中宗一郎氏の登場は、その意外性も含め、きっとその目論見を正当化してくれるに違いない。長年、近いようで遠い、遠いようで近い場所で仕事をしていた田中宗一郎氏との会話は、アメリカのポップカルチャーとの出会いから、日でも現在大ヒット中の『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』評、そして2010年代に入ってからさらなる空前の活況を呈しているシリーズ/リブートSF作品の今後に対する期待と懸念まで多岐に及んだ。(宇野維正)

    田中宗一郎が語る、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』とアメコミ映画の現在
  • 「ポップスには種も仕掛けもある」マキタスポーツが語る“ヒット曲の法則”

    ミュージシャンの形態模写、作詞作曲モノマネなどを得意とし、昨年アルバム『推定無罪』でスピードスターレコーズよりメジャーデビューしたアーティスト。音楽ファンからの注目も高まるマキタスポーツ氏が、1月30日に『すべてのJ-POPはパクリである (~現代ポップス論考)』を出版した。 同著では、過去のヒット曲たちに共通している楽曲の構造や歌詞などを分析し、彼独自の視点から言語化しているマキタ氏。今回は「印象批評」と「構造分析」をミックスさせた視点から、"ヒット曲の法則”をユーモラスに語っていただいた。 なぜ、カノン進行は一発屋を生むのか? ――まずは同著で一番重要なキーワードでもある「カノン進行は一発屋を生む」という言葉について マキタスポーツ(以下、マキタ):カノン進行は300年ほど前、バロック音楽の時代から存在するコード進行で、ヨハン・パッヘルベルという、バッハの師匠筋にあたる方が作ったもので

    「ポップスには種も仕掛けもある」マキタスポーツが語る“ヒット曲の法則”