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ブックマーク / realsound.jp (53)

  • 話が飛ぶ人は体内に複数の時間が流れているーーADHD当事者の作家が描くエッセイ『あらゆることは今起こる』

    小学校1年生のときの教室。クラスメイトたちの当たり前を、自分だけがさっぱり理解できず、それを周囲には悟られないように平静を装いながら、内心はげしく動揺している。もしかしたら自分は気づかないうちに、どこかに存在する「並行世界」に迷い込んだのかもしれない。そう思うと、次第に怖くなってくる。 小説家・柴崎友香の『あらゆることは今起こる』は、そんな「小説の始まり」のようなエピソードから始まる。でも、これは「小説」ではない。2021年9月にADHD(「注意欠如多動症」)の診断を受けたという柴崎が書き下ろした、発達障害をめぐるエッセイだ。医学書院の「ケアをひらく」シリーズに収められているのだが、そのコンセプトにたがわず、ひじょうに平易な言葉遣いで、発達障害の特性を知ることができる。著者自身が発達障害についての考えを深める過程と並行して書かれていて、ADHDという言葉を耳にしたことはあっても、充分に考え

    話が飛ぶ人は体内に複数の時間が流れているーーADHD当事者の作家が描くエッセイ『あらゆることは今起こる』
  • BLの源流『JUNE』元編集長・佐川俊彦インタビュー「女の子は美少年の着ぐるみを着ると自由になる」

    1978年に『Comic Jun』として創刊され、同名ブランド「JUN」があったことから第3号より『JUNE』と改題されたこの雑誌は、女性向けの男性同性愛をテーマとした点で後のBL(ボーイズラブ)の源流となった。かつて“JUNE”は、このジャンルの総称でもあったのである。マンガ中心の同誌は一時休刊をはさみつつ1980年代に熱心なファンを獲得し、1982年より姉妹誌『小説JUNE』も発行された。だが、BL台頭後はテイストの違いから退潮を余儀なくされ、2013年に『JUNE』ブランドの雑誌は姿を消した。『JUNEの時代 BLの夜明け前』は、アルバイト時代に同誌を企画して編集に携わり、やがて編集長となった佐川俊彦の回顧録である。彼は、時代の推移をどのように見つめていたのか。(円堂都司昭/6月10日取材・構成) 改題前の創刊2号と改題後の3号 ――若い頃からマンガに親しむなかで、『JUNE』という

    BLの源流『JUNE』元編集長・佐川俊彦インタビュー「女の子は美少年の着ぐるみを着ると自由になる」
  • 菊地成孔×荘子it『構造と力』対談 「浅田彰さんはスター性と遅効性を併せ持っていた」

    浅田彰『構造と力 記号論を超えて』(中公文庫) 1980年代のニュー・アカデミズムを代表する一冊『構造と力 記号論を超えて』が中公文庫で文庫化され、大きな反響を呼んでいる。批評家の浅田彰がドゥルーズなどのポストモダン・現代思想を明晰に体系化した同書は、1983年の初版刊行当時、社会現象になるほどの大ベストセラーとなった。 40年ものあいだ読み継がれてきた名著の文庫化にあたって、リアルサウンドブックでは、音楽家・文筆家の菊地成孔氏とDos Monosのラッパー・トラックメイカーの荘子it氏が書について語り合う対談を行った。菊地氏は2003年、自身が主催するバンド・DC/PRGで『構造と力』と題するアルバムを発表するなど、浅田氏から影響を受けている。荘子it氏は、学生時代に菊地氏の著作などから遡る形で書『構造と力』を知って、読み耽ったのだという。第一線の音楽家の二人は、書をどのように読ん

    菊地成孔×荘子it『構造と力』対談 「浅田彰さんはスター性と遅効性を併せ持っていた」
  • スピルバーグからの影響やVFX、AIの話題も 山崎貴、ハリウッドで『ゴジラ-1.0』を語る

    (左から)ピーター・フランス、山崎貴 フランス:会場からの質問を受けつけましょうか。 質問者:日の作品、そしてアメリカ映画にも戦争や終戦を扱った作品が増えていると思います。世界情勢の影響や、このような時期にどんなことを演出に取り入れられたのかを教えていただけますか? 山崎:最初はそんなに戦争の匂いはなかったので、撮影しているときはむしろCOVIDの影響の方が大きかったです。特にポスプロの最中にかなり戦争の匂いがしてきて、そういう映画を作っていたら、世の中が戦争の方に傾いていく、宿命的な感じがしました。今、日のボックスオフィスを賑わせている映画には、戦後の社会を描いた作品が多いので、いろいろなクリエイターたちの間に戦争の恐怖や反戦の思いが高まっているのではと思っています。 質問者:山崎監督はどのようにキャリアを始められたのでしょうか? また、脚家、監督、VFXスーパーバイザーの職種で

    スピルバーグからの影響やVFX、AIの話題も 山崎貴、ハリウッドで『ゴジラ-1.0』を語る
  • 『アクアマン/失われた王国』は恐るべき映画だ ジェームズ・ワンによる“お疲れ様超大作”

    さすがジェームズ・ワン! 『アクアマン/失われた王国』(2024年)は恐るべき映画である。いや、内容は普通なのだが、これは凄い映画だ。お蔵入りしてもおかしくないほどの波乱の中で作られているのに、それを感じさせないほど普通に面白いのである。 話自体はよくあるものだ。前作で海のヒーロー、アクアマン(ジェイソン・モモア)は海底王国アトランティスの王になった。今回はそんなアクアマンに強い恨みを持つ海賊ブラックマンタ(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)が、太古に封印された悪の王様の力を使って復讐を企て、世界が存亡の危機に陥る……という順当な続編である。 しかし、この映画は完成に至るまで2つの大きな嵐に見舞われた。1つ目はDCスタジオがブチ上げた現行のDCユニバースの見直し宣言である。マーベル・スタジオ映画の『アベンジャーズ』シリーズ(2012年)で知られるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバー

    『アクアマン/失われた王国』は恐るべき映画だ ジェームズ・ワンによる“お疲れ様超大作”
  • トレンド逆行の“小規模制作”から生まれた名作たち ADVジャンルが躍進した2023年のゲーム界

    まもなく終わりを迎える2023年。新年の到来を目前に控え、各所では1年の振り返りが盛んに行われている。 2023年はゲームカルチャーにとってどのような1年だったのか。その質問に対し、私がアンサーを返すのならば「ADV/ノベルの躍進が目立った1年」とするだろう。 稿では、ADV/ノベルのジャンルから2023年を代表する2作品を紹介したうえで、2024年以降の同分野の動向を考えていく。 小規模制作ながら「日ゲーム大賞」優秀賞を獲得した『パラノマサイト』 ADV/ノベルのジャンルから2023年のゲームカルチャーを振り返るとき、絶対に外せないタイトルの名がある。『パラノマサイト FILE23 所七不思議』(以下、『パラノマサイト』)だ。昭和後期の東京都・墨田区を舞台にしたホラーADVである同作は、2023年3月9日に発売されると、手に取ったプレイヤーから相次いで高評価を獲得。口コミでその評判

    トレンド逆行の“小規模制作”から生まれた名作たち ADVジャンルが躍進した2023年のゲーム界
  • 「小さな虫はとんでもなく機能的でかっこいい」電子顕微鏡技士が驚いた 美しすぎる昆虫たちのミクロの姿

    「虫を見たらすぐつぶしちゃう人って多いですよね。でも、そのつぶされる虫自体はとんでもなく機能的で美しいんです」 テラウチウンカ 部屋の中に小さな虫が飛んでいる。いやだな、と思いパチンと手で叩き潰す。誰にでもある日常的な動作であろう。その虫が一体どんな虫なのか、ほとんどの人は考えたこともないのではないか。 電子顕微鏡一級技士の渡邊孝平さんの仕事は、電子顕微鏡を使い病気の患者さんの細胞を撮影することだ。その電子顕微鏡を見る技術を使い、肉眼ではほんの小さな点にしか見えないような、わずか数ミリサイズのミクロの虫たちを拡大し、写真に収めてきた。その初めての書籍が「電子顕微鏡で見る昆虫・奇蟲図鑑」(グラフィック社)である。 渡邊孝平「電子顕微鏡で見る昆虫・奇蟲図鑑」(グラフィック社) 小さな虫に大きな魅力が隠れていることを、ほかの人にも見てもらいたい 「普段の仕事では、細胞の向こうに一人の患者さんがい

    「小さな虫はとんでもなく機能的でかっこいい」電子顕微鏡技士が驚いた 美しすぎる昆虫たちのミクロの姿
  • 『葬送のフリーレン』なぜ壮大な劇伴に? Evan Callが語る日本アニメのユニークさ

    映像と楽曲が共鳴することで生まれた名作は数えきれない。TVアニメ『葬送のフリーレン』もまた、音楽という点においても注目の作品だ。 劇中音楽を手がけるのは、アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』やアニメーション映画『ジョゼと虎と魚たち』などの映像音楽で知られる作曲家Evan Callだ。彼の作り出した音楽が奏でる旋律は、視聴者の心を揺さぶり、物語の背後に潜む切なさや言葉にできない温もりを引き出す。 さまざまな人気アニメ作品だけでなく、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも劇伴を手がけたEvan Call。彼は英雄譚の“その後”に焦点を当てた『葬送のフリーレン』という物語にどのようなインスパイアを受け、どのように劇伴を制作していったのだろうか。 「結局大事になってくるのは、物語の見せ方なんですよね」 ーー今回は劇伴オファーのタイミングで『葬送のフリーレン』に初めて触れたとお聞きしました。作品を実

    『葬送のフリーレン』なぜ壮大な劇伴に? Evan Callが語る日本アニメのユニークさ
  • 『君たちはどう生きるか』と2010年以降のジブリ作品の関係 共通する“家族の肖像”と“死”

    2010年代以降のジブリアニメとの関係 スタジオジブリの宮﨑駿監督の10年ぶりとなる新作長編『君たちはどう生きるか』が、7月14日に劇場公開された。ちなみに、公開日当日のレイトショーで映画を観て、すぐにこの原稿を書いている。周知のように、作は現時点で公式サイトも劇場パンフレットもなく、作品情報がきわめて乏しい。物語のディテールや登場キャラクターの名前など、少なからず誤記があるかもしれないが、ご容赦いただきたい。 一見しても多くの論点が見つかる作だが、この原稿ではさしあたり、10年ぶりの新作ということもあり、ここ最近、具体的には宮﨑の前作『風立ちぬ』(2013年)や、2010年代以降のジブリ作品を手広く俯瞰しながら、作のモチーフやテーマをその中に位置づけてみたい。10年ぶりの宮﨑作品に限らず、ここ10年ほどのジブリの劇場用長編といえば、実質、ジブリ作品とは言い難い『レッドタートル ある

    『君たちはどう生きるか』と2010年以降のジブリ作品の関係 共通する“家族の肖像”と“死”
  • 日本の歴史上、最も有名な武家法「御成敗式目」はなにが画期的だったのか? 気鋭の歴史学者・佐藤雄基に訊く

    1232年、鎌倉幕府三代執権の北条泰時により制定された初の武家法「御成敗式目」は、日歴史上「最も有名な武家法」とも称され、今なお広くその名が知られている。しかし、その内容が詳らかに知られてはいないだろう。 中公新書より刊行された『御成敗式目 鎌倉武士の法と生活』は、同法の主要な条文を詳しく解説、実態や後世への影響を明らかにした一冊だ。著者の佐藤雄基氏に、同書の狙いと「御成敗式目」の先進性について話を聞いた。(編集部) 佐藤雄基氏 ――「御成敗式目」と言えば、昨年(2022年)放送されたNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では坂口健太郎さんが演じていた北条泰時が制定した日初の「武家法」として有名ですが、今回それをメインに扱った新書を執筆しようと思った、そもそもの動機やきっかけは何だったのでしょう? 佐藤雄基(以下、佐藤):私はもともと日の中世の法を研究しています。平安時代の終わりから鎌

    日本の歴史上、最も有名な武家法「御成敗式目」はなにが画期的だったのか? 気鋭の歴史学者・佐藤雄基に訊く
  • 宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』宣伝しない理由が明らかに 鈴木敏夫の交友録『歳月』が示すキーマンの存在

    宮崎駿監督の10年ぶりの長編アニメーション『君たちはどう生きるか』が7月14日に公開された。『風の谷のナウシカ』(1984年)から40年近く、宮崎駿監督をプロデューサーとして支え続けた鈴木敏夫が、過去に出会った人について綴った7月7日発売の『歳月』(岩波書店)を開くと、宮崎駿監督にとって現時点での集大成となる作に至るまでの道のりと、どのような考えで制作に臨んでいたかがうかがい知れる。 『君たちはどう生きるか』が『千と千尋の神隠し』を上回る好スタートを切って、どこまで興収を伸ばすかに注目が集まっている。内容については、人生の掉尾を飾る傑作か、それとも晩節を汚す愚作かといった講評がいろいろと出回っているが、肝心なのは宮崎駿監督が、82歳という年齢まで作品を作り続けられたことだ。 その鍵となる人物が、『歳月』の冒頭に並ぶふたりの企業経営者だ。ひとりが氏家齋一郎。日テレビ放送網の社長や会長を務

    宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』宣伝しない理由が明らかに 鈴木敏夫の交友録『歳月』が示すキーマンの存在
  • “トム・クルーズ映画”の快作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』

    トム・クルーズ、61歳。還暦男が走る! 電車のうえで戦う! 崖からバイクで飛ぶ! 何の話かと言えば、もちろん『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(2023年)である。あらすじは一応あるが、もうザックリ「世界の危機に凄腕スパイのイーサン・ハント(トム・クルーズ)と仲間たちが立ち向かう!」とだけ理解しておけば大丈夫だろう。これは世界でトムにしか作れないスター映画であり、アクション映画と言うより「トム・クルーズ映画」の新たな快作である。 スター映画とは、主演を務めるスターを観に行く映画である。スターの活躍と魅力が存分に発揮されれば良いのであって、少しくらい物語のつじつまが合わなくても、無茶苦茶な話があっても許される映画……いや、むしろつじつまが合わず、「そうはならんやろ」と観客が冷静に思いつつも、「でも、この人だからなぁ」と許容してしまうのがスター映画だ。 この点を

    “トム・クルーズ映画”の快作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』
  • 『君たちはどう生きるか』を徹底考察 われわれ観客に対する宮﨑駿監督の“問いかけ”

    のアニメ界、映画界を長年にわたって代表し、イマジネーションに溢れた作品が世界から注目を浴びてきた宮﨑駿監督(先頃宮崎から宮﨑に改名した)。その引退作と見られていた『風立ちぬ』(2013年)から、短編作品『毛虫のボロ』(2018年)を経て、10年ぶりの長編作品として完成、公開された最新作が『君たちはどう生きるか』だ。 その圧倒的知名度を基に、メディアでの宣伝をおこなわないという奇策が、逆にミステリアスな印象を与え、その内容にさらなる興味を与えていた作『君たちはどう生きるか』の正体は、多くの観客に待ち望まれていた冒険ファンタジーだった。そこには、宮﨑監督がかねてよりその価値を主張していた「血湧き肉踊る漫画映画」としての娯楽性がつまっている。 一方で、黒澤明監督の『夢』(1990年)のように奇妙なイメージや謎に包まれた感覚的表現も数多く見られ、観客の反応のなかには「難解だった」という声も少

    『君たちはどう生きるか』を徹底考察 われわれ観客に対する宮﨑駿監督の“問いかけ”
  • 『水星の魔女』スレッタは“肯定”し“祝福”する 最終回に込められた現代人へのメッセージ

    2クールに渡って描かれた『機動戦士ガンダム 水星の魔女』がいよいよ最終回を迎えた。放送時にはSNSのトレンドを席巻するなど、今期大きな注目を集めた作品が幕を閉じる。 ※稿には『機動戦士ガンダム 水星の魔女』最終話(第24話)のネタバレを含みます。 これまでの『ガンダム』シリーズとは違って、TVシリーズ初となる女性主人公という現代に即したアニメとして話題となった『水星の魔女』は、Season1のラストで視聴者を絶望の淵へと落とし、Season2ではスペーシアンとアーシアンによる溝を描き出すなど、キャッチーなキャラクターデザインとは裏腹に深いテーマを私たちに突きつけてきた。果たしてどのように物語が帰結するのか、ひょっとしたら悲劇の結末が待ち受けているのではないか、という予感も過ぎった作だが、最終的には綺麗な終わり方だったように思う(詳細は後述する)。 前回、宇宙議会連合の放ったレーザー送電

    『水星の魔女』スレッタは“肯定”し“祝福”する 最終回に込められた現代人へのメッセージ
  • 『すずめの戸締まり』北米初登場7位で大絶賛に 波紋を呼ぶアリ・アスター監督の新作も

    「日VSホラー」。4月14日~16日の北米週末興行収入ランキングを一言で言うのなら、そういう言葉がふさわしいのかもしれない。先週に続き、第1位は『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』。3日間で8700万ドルを記録し、アニメーション映画の2週目の興行成績として、再び『アナと雪の女王2』(2019年)を抜いて史上最高の数字となった。 『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のすさまじさは、どんな大作映画であれ、だいたいは2週目の下落率が大きくなる傾向の中、前週比-40.6%という粘りを見せた点にある。特にスーパーヒーロー映画やホラー映画の場合、2週目の下落率は-60%以上となることもザラで、これは公開初週に映画館を訪れる熱心なファンが興行を支えていることを意味する。これに対して「-40.6%」という数字は、いかに作が新しい観客を招き入れているかの証左と言えるだろう。 『ザ・スーパーマ

    『すずめの戸締まり』北米初登場7位で大絶賛に 波紋を呼ぶアリ・アスター監督の新作も
  • 庵野秀明は“仮面ライダー”をいかに再構築したのか TV版と石ノ森章太郎の漫画版への深い愛 

    庵野秀明監督『シン・仮面ライダー』が公開された。1971年に放送されたTV版『仮面ライダー』への偏執的な愛とともに、強く打ち出されているのが、原作者・石ノ森章太郎の漫画版『仮面ライダー』(講談社)へのリスペクトだ。それは単なるギミックやオマージュにとどまらず、もはや作品の背骨になっている。映画を観る前に漫画版を読んでいるかどうかで、解像度が変わってくるのではないかと感じた。 あらためて触れておくと、石ノ森章太郎による漫画版はTV版『仮面ライダー』の原作ではない。もともとTV番組の企画として立ち上がったものに、石ノ森が設定とキャラクターデザイン担当として加わって原作者となった。その後、TV局からの要請に応える形で、メディアミックスとして『週刊ぼくらマガジン』(講談社)での連載が開始されたのが漫画版ということになる。 TV版の『仮面ライダー』は藤岡弘、扮する仮面ライダー1号(郷猛)が活躍する

    庵野秀明は“仮面ライダー”をいかに再構築したのか TV版と石ノ森章太郎の漫画版への深い愛 
  • 『ラブライブ!』の大人気キャラを描いた室田雄平 自身のイラストを「賞味期限切れ」と語る理由と次なる挑戦

    『ラブライブ!』の大人気キャラを描いた室田雄平 自身のイラストを「賞味期限切れ」と語る理由と次なる挑戦 24歳にして突如、『ラブライブ!』シリーズのキャラクターデザイナーに抜擢され、数々のかわいらしいキャラクターを生み出し、人気を牽引するアニメーターになった室田雄平。シリーズの人気は第2作『ラブライブ!サンシャイン!!』で頂点に達し、話題を席巻した。 室田は2010年代のアニメ界で、もっとも目にされたキャラクターをデザインした一人といえるだろう。ジャケットのイラストを描いたCDはヒットチャートの常連になり、『ラブライブ!サンシャイン!!』の舞台となった静岡県沼津市には聖地巡礼に押し寄せる“ラブライバー”が続出。さらに作品から生まれたアイドルグループは紅白歌合戦にも出場し、そのアニメ制作にも関わったほどである。 しかし、室田は著書『アニメーター室田雄平が考える ヒットするキャラクターデザイン

    『ラブライブ!』の大人気キャラを描いた室田雄平 自身のイラストを「賞味期限切れ」と語る理由と次なる挑戦
  • 小池栄子「生涯忘れることのできない役に出会えた」 『鎌倉殿の13人』北条政子への感謝

    NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』がついに終わりを迎える。視聴者を魅了した数多くの登場人物が途中で命を失い、姿を消していく中で、第1回から最終回まで、物語を牽引した1人が北条政子だ。劇中でもっとも辛い思いをし、もっとも変化した人物と言っても過言ではない政子。日史に残る「演説」に至るまで、新たな政子像を小池栄子は体現しきった。すべての撮影を終えて、彼女はいま何を思うのか。 ーー2年前の出演発表の際、「(前回出演した大河ドラマ『義経』は)楽しむ余裕も無く終わってしまい悔いが残っています」とコメントされていました。『鎌倉殿の13人』の撮影を終えて、今回は“悔いがない”撮影になりましたか? 小池栄子(以下、小池):今回はちゃんと楽しめました。現場で“息を吸う”こともできたし、周りを見渡すこともできて。どんな仕事も諦めないで続けていくとこんなご褒美が待っているんだなと。第1回から最終回まで出番のあ

    小池栄子「生涯忘れることのできない役に出会えた」 『鎌倉殿の13人』北条政子への感謝
  • 山本耕史、三浦義村として“裏切り”の心苦しさはなかった? 『鎌倉殿の13人』撮影秘話

    NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』がついに終わりを迎える。物語の中盤に差し掛かる頃、脚を手掛ける三谷幸喜がインタビューで語ったのが「ラスボスは三浦義村」という言葉。その言葉どおり、物語が終盤に差し掛かるにつれて、主人公・北条義時(小栗旬)にとって、三浦義村の存在は幼なじみ/親友から違う何かになろうとしている。各登場人物が大きく変化していく中でもっとも“変化しなかった”人物である三浦義村を山耕史はどう演じていたのか。 ――山さんは三谷幸喜さんが脚を担当をしている大河ドラマ『新選組!』(2004年)、『真田丸』(2016年)、『鎌倉殿の13人』(2022年)の3作品に出演されています。 山耕史(以下、山):3作の中で、頭から最後まで出ているのが『新選組!』と『鎌倉殿の13人』になりますが、実はどちらも大河ドラマの中で人生を終えていないんですよ。大河ドラマは、いろいろな人が参加しては

    山本耕史、三浦義村として“裏切り”の心苦しさはなかった? 『鎌倉殿の13人』撮影秘話
  • 小栗旬、『鎌倉殿の13人』ラストインタビュー 「大河ドラマの主演はまたいつかやりたい」

    ついに12月18日に最終回を迎えるNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。歴史の偉人を描く大河ドラマのほんとんどは、主人公が周囲から愛される人物として、あるいは何かの頂点に上り詰めた人物として描かれてきた。しかし、作の主人公・北条義時は、物語が進めば進むほど、目から光が消え、修羅の道に突き進む“ダークヒーロー”へと変貌していった。第1回とは別人のようになった義時を小栗旬はどんな思いで演じていたのか。クランクアップ後、作にかけた思い、印象的だったシーンなどについて、じっくりと話を聞いた。 ーークランクアップの瞬間はどういった気持ちだったのでしょうか? 小栗旬(以下、小栗):今まで経験してきたアップとはまたちょっと違う感じでしたかね。まだまだ続けていたいという気持ちももちろんあったし、それと同時にやっと終わったんだなとホッとする気持ちもあり。一言では言い難い心境でした。ただ、当に納得のいく終

    小栗旬、『鎌倉殿の13人』ラストインタビュー 「大河ドラマの主演はまたいつかやりたい」