失われた細胞を移植で取り戻すと言う再生医療の考えは大変わかり易い。私自身、日本で最初の京大再生研の設立に関わった時、目的がわかり易すぎることを心配した。当時クローンヒツジ・ドリーの研究により、ほ乳類体細胞がリプログラムすることが明らかになった。とすると、一つの体細胞から他の体細胞が発生しても問題ない。この風潮を受けて、当時血液が神経になったり、神経が血液になったり、果ては血液が卵子になると言った論文がNature, Cellなどのトップジャーナルに掲載された。全て論文は取り下げられてはいないが、今となっては誰も見向きもしない。これが研究者ソサエティーの強さだ。しかし一般人、特に病気に悩む人となると研究を本当に評価する手段が無いため、少しでも報道された可能性にはわらをもすがる気持ちで期待を寄せ続ける。一方科学者も、可能性としては何が起こっても否定は難しいと考えるようになっているため、ある治療