大谷能生『平成日本の音楽の教科書』(新曜社、2019年)はちょっと変わったアプローチで音楽について考える本だ。なにがユニークかというと、「日本の音楽の教科書にはなにが書いてあるか」に的を絞っているということ。あくまで主役は教科書。大谷の言葉を借りれば、「「音楽の教科書」をアタマからトータルに、予断を持たず、一つの読み物として、いわばひらたく読んでみること」(p.49、強調は原文ママ)。ひたすらこれに徹した本なのだ。 しかし果たしてそこからなにが得られるか、と思って読み進めると、驚くほどに鮮やかに「学校で音楽を学ぶ」ことに込められた思惑(つまり、国が音楽を通じてなにを身につけて欲しがっているか)や意義(反対に、いち個人が音楽教育からなにを学びうるか)が浮かび上がってくる。さらにそこからまた一歩踏みこんで、そもそも音楽っていったいなんなのか、どういうふうに付き合っていけばいいのか、という原理的
![なぜ学校で音楽を学ぶのか? 大谷能生『平成日本の音楽の教科書』が浮き彫りにする、音楽教育の意義](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/d69b555d54ea7e8f5ebd1ec18f5c324f8b022f83/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Frealsound.jp%2Fwp-content%2Fuploads%2F2019%2F11%2F20191121-kyokasho.jpg)