アメリカとロシア、二つの文化の狭間に身を置いた亡命者のノスタルジアが、極度に政治化されたこの20世紀末に、イデオロギーを潜り抜け、食という人間の本音の視点から綴らせた料理エッセイ、機知に溢れた文明批評。(別丁レシピ付) いま、料理は世界で最も普及した趣味となっている。ひょっとしたら、それは今日、どのような知的活動の分野においても、しっかりした基盤があまりにもわずかしか残っていないせいかもしれない。……いい料理とは、不定形の自然力に対する体系の闘いである。おたまを持って鍋の前に立つとき、自分が世界の無秩序と闘う兵士の一人だという考えに熱くなれ。料理はある意味では最前線なのだ。………… (本文より)