1990年代はじめ、製造業で設計の仕事をするには、まず数千万円の出費を覚悟しなければならなかった。 機械設計の現場で使われていた3D-CADシステム「CATIA」は、ソフトウェアのライセンスだけで1シート数百万円。それを動かすためのUNIXワークステーションと合わせると、設計環境1式で数千万円になることも珍しくなかった。設計とは、巨大な資本を持つ企業だけができることだった。航空機や自動車の設計部門、あるいは防衛産業——そういう場所にしか、3D-CADは存在しなかった。 2026年現在、3D設計作業はゼロ円から始められる選択肢がある。 ブラウザーを開けば、プロが使う水準のCADツールが無償で動く。インストールも、支払いも、審査もいらない。家庭に一台の3Dプリンターがあれば、設計から出力まで個人で完結できる。企業の特権だった行為が、Makerの日常になった。しかし、過去を知る人は、これを手放し

