2019年12月、金融庁が金融機関の検査に利用していた「金融検査マニュアル」がついに廃止された。これに伴い、各金融機関は新たな行内定義による引当・償却実務を実践することとなった。ただし、大手銀行はともかくとして、代替する新たな要件を速やかに定義することがリソース的に困難な金融機関もある。このため金融庁は、令和元年12月18日、「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」を公表している。本稿では、本文書の考え方を紐解きながら、金融庁の今後の方針を解説する。 金融庁が金融検査マニュアル廃止に踏み切った理由 バブル崩壊後、金融庁では各金融機関の特異なビジネスモデルや戦略とは「切り離す」格好で、長らく融資業務にかかる検査や監督を実践してきた。 それが故に、個々の金融機関が新たな融資のスキームを定義したり、個々の融資先企業の高度な分析を踏まえた融資を実施したりする取り組みの中でも