その国には、住所というものがなかった。住所表記の仕組みがないので、場所を伝える時は、X市場の前とか、XXホテルの東隣3軒目というしかない。誰かに郵便を出すには、市の名前を書いて、あとは私書箱(PO Box)の番号をつける。だから誰もが、郵便を自分で取りに行くことになる。 その国の名前を、サウジアラビアという。初めて行った時には、ずいぶん奇妙に思えた。だが、毎日の生活は、普通に行われている。最近は、いくつかの市では通りの名前と番号による、欧米式の表記もされているようだ。だが、全国的ではない。カーナビがどうなっているのか、わたしは知らない。 そんなのはごく特殊で例外的な事例だ、と思われるかもしれない。のんびりしたアラブの途上国の、それも国土の大半が砂漠である国の特殊事情だろう、と。多くの日本人は、そんな風に思うかもしれない(現実のサウジはG20のメンバーで大国だが)。
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