戦後の闇市から立ち上がり、開業70年を迎えた「青空書房」(大阪市北区)の店主、坂本健一(さかもと・けんいち)さんが亡くなった。大阪の古書店主で現役最高齢の93歳だった。「本に埋もれて死ねたらええわ」。その言葉通り、本が山積みの店舗兼自宅で静かに息を引き取った。 店は天神橋5丁目交差点近くの路地を西へ入ったところにある。開けっ放しの玄関には「二度とない人生 ここでしか無い一冊」という坂本さん自筆のポスター。家族の話では3日朝、ヘルパーが独居の部屋を訪ねると、坂本さんはベッドに横たわって亡くなっていた。日めくりカレンダーの日付は「2日」だった。 15歳でモーパッサンの小説「女の一生」に出会い、「生きる人間の魂」に衝撃を受けてからの読書人生。太平洋戦争が始まり、学徒動員で赤紙が来た日はロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」を読み、不屈の音楽家の生涯に「愛と勇気を学んだ」。動員先には「西洋ものは何