産経新聞に1年間に4回寄稿した「司馬遼太郎」についてのエッセイ。最終回は「司馬遼太郎と国民国家」 日本はいつから「こんな国」になってしまったのか。 誰もがこの定型的な慨嘆句を口にする。リベラルも極右も、グローバリストもレイシストも、その政治的立場の違いにもかかわらず、「日本の劣化」という現実評価については同じ言葉づかいをする。 この吐き捨てるような現実嫌悪の言を制して、「少し前にもっとひどい時代もあったじゃないか。あれに比べたら今の方がまだずっとましだよ」と言ってくれる人は周りにもう見当たらない。司馬遼太郎がいなくなったというのは「そういうこと」なのだと思う。 司馬遼太郎は「国民作家」だった。 国民作家とは、国民国家を終の棲家と思い定めて、そこを動かぬ人のことである。 国民国家は石や滝のような自然物ではない。歴史の流れの中で形成された暫定的な制度である。歴史的条件が変われば変容し、時には消
先週の日曜に上智大学で「世阿弥とスタニスラフスキー」というテーマのシンポジウムがあった。そこで「能楽と武道」というお題を頂いて短い発表をした。中身は2年前にある能楽専門誌に寄稿した「世阿弥の身体論」とだいたい同じ。 シンポジウムに来られなかった方のためにオリジナルを公開しておく。 文献的根拠のぜんぜんないまったくの私のスペキュレーションであるので、これを「定説」と勘違いして、人前で話したりすると大恥をかくことになるのでご注意されたい。 世阿弥の身体論 平安末期から室町時代にかけて能楽と武芸と鎌倉仏教が完成した。 それらは日本列島でその時期に起きたパラダイムシフトの相異なる三つ相であるという仮説を私にはしばらく前から取り憑かれている。そういうときには「同じ話」をあちこちで角度を変え、切り口を変えながら繰り返すことになる。今回は能楽の専門誌から「世阿弥の身体論」というお題を頂いたことを奇貨とし
ある通信社から天皇陛下の「おことば」についてのコメントを求められた。一般紙面には「おことば」の要旨だけしか公開されないので、紙面と整合しないところはカットされた。 そこを戻して、すこし加筆したものをここに掲げておく。 今回の陛下のお言葉はかなり「読みで」のあるものだったと思います。 表面的には、ただこの一年間の出来事を羅列したように見えますが、一つ一つの扱いかたや措辞に細やかな気遣いが感じられました。 経時的な理由から最初に置かれた「フィリピン訪問」には分量的には最も多くの字数が割かれていました。 フィリピンでの戦闘については、かつて大岡昇平は『レイテ戦記』で「あの戦争でいちばん苦んだのは日本人でもアメリカ人でもなく、現地のフィリピン人だ」と書いたことがありましたが、「先の大戦で命を落とした多くのフィリピン人、日本人の犠牲の上に」とあえて「フィリピン人」を先に置いた陛下の気遣いには大岡の思
しばしば国際的な争点ともなる靖国神社と異なり、あまり議論されることのない伊勢神宮。だが、目と鼻の先の伊勢志摩でG7サミットが開催されたことからもわかる通り、政治的な存在感は高い。仏高級紙は、この伊勢神宮を切り口に、「神道と日本政治」について深い議論を展開している。 日本では常に曖昧な「宗教と政治」の関係 白い小石を敷き詰めた地面に建てられた柱の上に、明るい色の木造の建造物が建っている。とんがった屋根は茅葺きで、棟木は金色の鰹木で飾られている。 ここ伊勢神宮内宮は、訪れた人が戸惑うほどの簡素さに満ちているが、日本で最も崇められている場所だ。日本の神話で、皇室の祖神とされる天照大神が祀られているからである。 安倍晋三首相が、2016年5月のG7サミットで各国首脳を迎えるのに、この神道の聖地を選んだのには下心があったはずだ。しかし、先進国首脳会議を伊勢神宮の目と鼻の先で開催し、各国首脳を神宮参拝
2002年の在中国領事館でのこと。現在でもインターネットで確認できる記事として、日本政府の弱腰を批判していた赤旗から紹介する*1。 中国、日本公館内で拘束/日本側抗議 北朝鮮の5人引き渡し要求 中国遼寧省瀋陽市の日本総領事館で八日午後、北朝鮮から脱出してきたとみられる五人の市民が駆け込みをはかり、うち三人が警備の武装警官に取り押さえられ、総領事館の構内に入った二人も追ってきた警官に連れ去られた事件で、現在、五人は身元確認のため中国側の取り調べを受けています。中国側の警官が総領事館構内に入ったことについて、高橋邦夫駐中国公使は同日夕、中国外務省の邱紹芳領事局副局長にたいし、公館の不可侵を定めた「領事関係に関するウィーン条約違反」であり、「非常に遺憾」と抗議し、「関係者の速やかな引き渡し」を求めました。 一方、中国外務省の孔泉報道官は九日の定例記者会見で、「現在の世界的な反テロリズムの背景」の
大阪大学の菊池誠教授が、留意はしつつも、靖国とカルトならば前者を選ぶとツイートしていた。 このツイートへの異論に対して、カルトとの危険を比較して靖国を選ぶとまで断言した。 どちらも拒否するべきという異論*1に対しては同意しつつ、やはりどちらかを選ぶしかない問題だと重ねて主張している。 しかし政治家を選ぶ場合であっても、棄権も選択肢のひとつではあるし、そもそも選挙だけが意思決定の手段ではない。 両方への批判を公言することはいつでもできるし、本来ならばデモや陳情という選択肢もある。 菊池教授のような立場ならメディアを通した発言も可能だろう。 また、どちらも拒否するべきという異論でも指摘されているように、菊池教授はカルトとカルトの二択という奇妙な問題設定をしている。 まず靖国神社とは、意外と新しい宗教のひとつだ。明治時代につくられており、江戸時代末にできた天理教よりも遅い。 天理教(てんりきょう
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モンゴル帝国(元)の襲来を、鎌倉武士が2度にわたって食い止めた「元寇(げんこう)」。文永の役(1274年)、弘安の役(1281年)とも長年、暴風雨(神風)が勝因とされてきたが、近年、新たな見方が浮上している。 今まで「元寇」はおおむね次のような経緯だったとされてきた。 1274(文永11)年、900隻、4万人の元軍が対馬と壱岐を攻略。鷹(たか)島(長崎県)上陸後、博多湾まで進出したが、暴風雨に遭い退却(文永の役)。 続く1281(弘安4)年、朝鮮発の東路軍と中国発の江南軍の4400隻、14万人が攻め寄せたが、日本側の防戦で一時撤退。さらに鷹島に停泊中の船団を暴風雨が襲ったため、退却(弘安の役)。その後、皇帝フビライは3度目の日本遠征を計画したが、亡くなったため、沙汰やみとなった。 危機に大風が吹き、異国の敵が追い払われたことから、2回にわたる暴風雨は「神風」といわれ、第2次世界大戦中には、
「その考えは現実的でない」 「理想と現実は違う」 このような言葉で私たちは「現実」を語りがちです。しかし、私はこの言葉を聞くたび、あるいは自分で使うたびに、何とも言えない違和感を覚えます。ここでいう「現実」とは何でしょうか?「現実的でない」ことがなぜネガティブな価値を帯びるのでしょうか。 丸山眞男「『現実』主義の陥穽」は、私のこの疑問を考えるヒントをくれました。このエッセイは1952年に出され、戦後の日本の各国との講和およびその後の再軍備をめぐる議論を踏まえて書かれていますが、その分析は現在でも通用するように思えます。 「現実」の3つの特徴 丸山は日本における「現実」という言葉の使い方について三つの特徴があるといいます。一つ目は現実の「所与性」です。「所与」という言葉は変えられない前提として私たちに「与えられたもの」というニュアンスがありますが、丸山の説明を読んだ方がわかりやすいと思います
Simon_Sin @Simon_Sin 「国立大の授業料無償化すると国家財政が危うくなる」とか言っている連中は、法人税減税の時も同じ事言ったのか?国立大無償化には4000億円しかかからないけど法人税減税で税収は7000億円減ったんだぞ?なんで大企業には甘いのに国民には厳しいの? 2017-01-05 12:07:59 rionaoki @rionaoki むしろ、インテリの皆様は、大学が世間からどれだけ嫌われているのか認識したほうがいいと思うんよね。大学の先生なんて概ね仕事なんてしてないし、好きなことやって裕福な暮らしをしているぐらいに思われてるでしょ。 2017-01-05 16:39:00
東京都は、まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」を防ぐため、災害に備えて保管し、来月末で賞味期限が切れるクラッカー10万食分を、希望する個人や団体に無料で配布することになりました。 これについて都は、まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」を防ぐため、来月末で賞味期限が切れるクラッカー10万食分を、希望する個人や団体に無料で配布することになりました。 個人向けには、1人5食分を限度に、9日千代田区で開かれるパラリンピック競技を体験するイベントで配布するほか、今月28日と来月4日には上野動物園で、来月5日には多摩動物公園で配ることなどを予定しています。 また、社会福祉法人や自治会など団体に対しては、350食分以上を引き取ることを条件に今月10日から16日まで都のホームページを通じて申し込みを受け付けて、都庁などで配布するほか、着払いで送ることも可能だということです。 都はこのほかにもアルフ
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