■相手を屈服させるだけの言葉にあふれた時代を脱するには? 〈「呪い」は今や僕たちの社会では批評的な言葉づかいをするときの公用語になりつつあります〉 内田樹は、『呪いの時代』の冒頭でこう書いている。内田が指摘したこの現況はテレビの討論番組などを観ていても感じるが、ネットにおけるコメントや意見のやりとりをちょっと覗けば、深くうなずくしかない。 そこには、相手を傷つけて沈黙に追いこむ言葉が飛びかっている。少し前に話題になった「自分以外は全部バカ」よろしく、自説と他説をすり合わせて合意形成する気などさらさらない、とにかく相手を屈服させるための言葉たち。それらは、たしかに呪詛のようだ。今ある現実を何とか変えたいという苛立ちも見え隠れするが、内田は長く生きてきてわかったことの一つとしてこう指摘する。 〈「現実を変えよう」と叫んでいるときに、自分がものを壊しているのか、作り出しているのかを吟味する習慣を