切り裂きジャックというシリアルキラーが存在した。127年前のイギリスに。この殺人犯の呼び名は映画や文学作品といった大衆娯楽の中にたびたび登場する。世界的に最も有名な殺人犯と言っても過言ではないだろう。しかし、自らの記憶を手繰り寄せてみると、この殺人犯が127年前にどのような殺人事件を起こしたか、明確に説明できるような知識が何一つ無いことに気づく。私に限らず、そのような人は多いのではないだろうか。 イギリス人である本書の著者ラッセル・エドワーズも若い頃は、この殺人事件について何も知らなかったという。本書は切り裂きジャックという存在に憑りつかれた一人の企業家が、被害者の物とされるショールを手に入れ、数々の困難を乗り越えながら、科学者と協力しDNA鑑定を行いショールの由来と切り裂きジャックの正体をつきとめようとした日々を、自身で記録した回想禄だ。 当時のイースト・エンド、ホワイトチャペルを震撼さ